122: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/17(水) 12:01:11.55 ID:90KdAnqB0
それから先輩たちとお偉いさんに挨拶回り。お褒めの言葉を頂戴し、これからの活躍を期待された。
そうこうしているうちにすっかり酔っ払った俺は、会場の隅に置かれた椅子に腰を下ろした。
ぼうっと会場を眺める。みんなそれぞれ笑っている。アイドルも社員もみんな。
きって俺にはこれぐらいの距離感がちょうどいい。眺めているぐらいのほうが気楽だ。
でも、たまには。なにも考えずに楽しむのも悪くないのかもしれない。
この三ヶ月を思い返して、そんなふうに考えた。感傷的になっているのだろう。あるいはおかしくなっている。
しばらく休んでいると奏がやってきた。
「ねぇ、ふたりでパーティー抜け出さない? ……ふふっ。なーんて、映画のワンシーンみたいよね、このセリフ。で、返事は?」
「いいけど、なんで」
「プロデューサーさんと話したいだけって理由だけじゃ……ダメ?」
「……駄目じゃない。じゃあ、行こうか」
奏を引き連れて、敷地内の広場に移動する。もう夏になるのに比較的涼しい。夜空には雲ひとつなく月がぼんやりと浮かんでいた。
ベンチに腰掛ける。さあっと心地よい風が吹いた。
「どうだった?」
「褒められたよ。世間の評価も上々だ。出来過ぎた話に思えて落ち着かないぐらいだな」
「ふふっ、プロデューサーさんは疑心暗鬼になりすぎ。まあ、驕らないのは感心できるわね」
「随分と大人びた発言だな。いや、容姿もか」
奏は空を眺めていた。月を眺めているのかもしれない。
「大人びて見える? ……背伸びしなきゃ届かないの。……なんてね」
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