4: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/07/28(木) 19:03:05.18 ID:pU98D89e0
俺は大仰にため息をついて見せる。
「それで、話はこれだけですか? そろそろ戻りたいんですけど」
「まあまあ、ちゃんと許可とってるんだからゆっくりしていこうぜ。とりあえず話だけでも聞いてくれって」
「他になにか」
「いやな、私はお前に感謝してるんだよ。てっきり三ヶ月ぐらいで逃げ出すと思ったのにもう三年だ。それもちひろさんに気に入られてるし、勤務態度は真面目で仕事の評判もいい。おかげで私の株が上がった」
「それはまあ……」
前の会社を辞職してからぷらぷらしていた俺に、業界最大手のこのプロダクションを紹介してくれたのだ。いくら苦手な先輩とはいえ、恩人の顔に泥は塗れないだろう。
まあ、単純に給料がいいから頑張れるというのもあるけれど。ここは残業代の出る素晴らしい会社である。
「だからな、今回はただの人手不足で声をかけたわけじゃないんだよ」
「その心は」
「昇給。約二倍」
「まじ」
思わずため口になる。いやしかし、現状だって大学の同期たちと比べてもかなり多い額を貰っているのに、それが二倍って。
きらんと先輩の眼が鈍く輝いた気がした。
「まじもまじ。とはいえ、当然そんなすぐには無理だけど。最終的にと言うか、最大での話かな。とにかく今よりかなり貰えるようになる」
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