40: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/07/31(日) 22:09:35.31 ID:Cp5Q/xwsO
それからまた数日が経ったある日、俺と速水さんは大型のCDショップを訪れた。
今日は宮本フレデリカのデビューシングル発売記念の握手会が開催されていた。
デビュー以前に数度顔を合わせた印象から言って、宮本さんは大物になる確信がある。だから彼女からは、なにか糸口をつかめそうな気がしていた。
「それにしても結構賑わってるけど、速水さんのときもこうだった?」
「まさか。……一時間で十人だったわ」
速水さんは寂しそうに周囲を見渡していた。気持ちは察する。申し訳なくて、ちょっとだけ後悔した。
「でも、十人のファンが来てくれたんだ。落ち込むことじゃあないよ」
「ええ、人数に不満があるんじゃないの。感謝はしてる。ただ、不満があるとしたら自分の仕事ぶりによ。来てくれた十人は、ここにいる人たちほど楽しそうじゃなかったから。申し訳ないなって」
「……そうだね。報酬を貰う以上、相応の仕事をしなくてはならない。給料は労働への対価だ。だから、真摯に取り組む限り、お金を稼ぐのは悪いことじゃないんだよ。その意味は考えて欲しいな」
「うん、認識が甘かったわ。そうよね、私たちはプロだもの。対価を求めるのは当然だよね。そのためにも自分を高めていかないと」
「ああ、俺もだよ」
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