41: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/07/31(日) 22:12:47.56 ID:Cp5Q/xwsO
この握手会は通過儀礼的なイベントだそうだ。まだ認知されていない現状の認識と、ここからが本当のスタートだと自覚させる意味合いがあるらしい。
素人と言っても過言ではない彼女たちには過酷な試練だが、意識を変えるにはいいのかもしれない。
アイドルは部活や趣味ではなく、仕事なのだから。
宮本さんへと続く列は、少なく見積もっても三十人はいる。デビュー直後としては大成功の部類だ。
俺と速水さんは宮本さんのシングルを購入し、列に並ぶ。ひとりひとりと前に進んでも列は短くならない。
宮本さんは何者なのだろうか。末恐ろしくてならない。
俺と速水さんの順番がやってくる。宮本さんはこちらを確認すると少し驚いた様子だった。
「おおー! ふたりとも来てくれたんだうれしー!」
「順調そうでなによりだ。言いそびれてたけど、デビューおめでとう」
「アリガトしるぶぷれー、カナデちゃんもありがとねっ」
「上手くいってるみたいで安心したわ。この調子で頑張ってね」
「フフーン! アタシは絶好調! 今ならフルマラソンも走れそうっ。ちょっと試してくるね!」
「おっけー、じゃあ残りのCD全部背負って売ってきてね」
言ってみたものの、そこそこ売ってきそうな気がする。
宮本さんは軽口にもどこ吹く風で、あははっと笑って手を差し出してくる。適当なようでしっかり時間を把握しているあたり、本当に侮れない。
「やっぱり握手したくなっちゃったー、はい握手」
細くしなやかな手は柔らかくて温かかった。握手の最中、目を見てにこっと微笑まれた俺は危うく惚れかけた。やりおる。
隣から飛んでくるジト目がびしびし刺さって痛い。そろそろ次に譲ろう。
「最後までいるから、またあとで」
離れ間際、小さく手を振ってくれた宮本さんは誰がどう見てもアイドルだった。
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