6: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/07/28(木) 19:05:16.69 ID:pU98D89e0
「……でも、忙しくもなるんでしょう」
「まあな、それはそうだろうよ。ただ相応の評価はされるし、場合によっちゃ臨時ボーナスも出るんだぜ」
「…………」
「もちろん、無理にとは言わない。やっぱり激務にはなるからな。ただし、お前には悪いけどこの話はここで決めてもらわないといけない」
「えっ、今ですか」
先輩は深々と頷く。むちゃくちゃだ。こんな大切なことをすぐに決めなくてはならないなんて。
「ああ、とにかく時間がないんだよ。あくまで今回は特例なんだ。他にも候補がいてな、お前が駄目なら次の奴に当たる。頼み込んでお前を優先してもらったけど、私にできるのはここまでだ」
機会はもうこない。そう考えると逃すには大きすぎる魚な気がする。それに、いざとなれば辞めるのも手だろう。先輩には悪いけど、元々このプロダクションに骨を埋める気はなかったのだから。
無責任な思考は気を軽くしてくれる。
「……わかりました。引き受けます」
「それは重畳だ」
先輩は嬉しそうに微笑んだ。悪意的な笑みだった。
俺は失念していた。先輩にはサークル時代から何度も騙されてきたことを。よくよく考えてみれば、先輩の言葉は詐欺師の手口そのものだ。
やられた。そう内心後悔しつつ、俺はプロデューサーへと栄転したのだった。
◇
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