65: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/04(木) 01:43:27.96 ID:pTgjkfxw0
数日が経っても思考は冴えないままで。
現実みの薄れた日々に目を回しそうだった。地に足がついていない感覚。
空回っているのかもしれない。気が滅入っているのかも。
でも、立ち止まることは許されない。俺ひとりの問題ではないのだ。
ロビーに下りるためエレベーターに乗り込む。扉を閉めようとすると、先輩が駆け込んできた。
「何階ですか」
「二階。サンキュー」
なんとなく気まずい。先輩は沈黙をきらうように言葉を続けた。
「そういや最近、喫煙室で見かけないな。禁煙か?」
「いえ、会社では控えてるんです。煙草、嫌がるかもしれませんし」
「あー、私も送り迎えのときは控えるけどさ。あんまり無理するなよ」
「べつに無理してるつもりは。終わったら吸えますしね」
「や、煙草のことだけじゃなくてな。お前は意外と女々しいんだ、我慢なんてせずに吐きだしたほうがいい。たぶん、千川さんの言ってたのはそういうことだと思うぜ?」
エレベーターは決まった通りに止まる。扉が開いた。先輩はエレベーターを降りて振り返る。
「案外、単純なものなんだよ。お前が考えるよりはな」
そう言って去っていく先輩。扉が閉まるとひとりになった。
「できたら苦労しねーよ」
呟く。取り残された気分になって落ち着かなかった。
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