73: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/04(木) 02:12:08.23 ID:pTgjkfxw0
新田さんを送り届けたあと、速水さんを乗せた社用車は会社に向けて走っていた。
ライブ直前に速水さんが口にした言葉。
「これが終わったらレッスン室使わせてくれない?」
きっと、このときにはもう朧げながらも答えは出ていたのだろう。
速水さんに足りないもの。あるいは間違えてきたもの。
言葉にするのは簡単だ。しかし、新田さんの言うとおり、こればかりは自分で気づかないと意味がない。
感覚の問題であるし、意識の問題でもある。
でも、本当は。
それだけじゃないのかもしれない。
俺は今でも怖い。口にすれば壊してしまいそうで、否定してしまいそうで。怖い。
だとしても、必要なことだ。これは仕事なのだ。俺の感情なんて必要ない。
そう奮い立たせる。やるしかない。俺は速水奏をアイドルにしなくてはならない。
しばらく無言で運転を続けていると、速水さんは不意に口を開いた。
「少し、話をしても大丈夫?」
当然、否定する理由もなく、俺はいいよと応えた。
◇
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