過去ログ - モバP「速水奏の輝かせ方」
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75: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/04(木) 02:35:55.55 ID:pTgjkfxw0
 些細な仕草も喜怒哀楽も、何気ない一言も。ひとつひとつが速水さんの魅力だ。しかし、彼女はそういうものを押し殺して、技術を追求してしまった。

「速水さんに足りないのは自分を表現することだ。ファンが求めるのはアイドル速水奏であって、速水さんの歌とダンスなんだ。アイドルはファンに応えてこそのアイドルなんだと、俺は思う」

 当然、人気のあるアイドルならば、好きなことをやってもファンはついてくるだろう。ファンは知っているのだ。そのアイドルは自分たちを楽しませてくれると。

 しかし、速水さんは違う。まだほとんど認知されていない。彼女はファンに伝えなくてはならない。私はあなたを楽しませると、仕事を通して伝える必要がある。

 速水さんは力の抜けたように笑った。憑き物が落ちたみたいだった。

「うん、私も気づいたよ。ずっと巧く歌って踊らないといけないと思ってた。完璧を目指していた。でも、違うんだね。それは私の求めることで、ファンが求めることじゃない」

「本当はさ、どこかで壁にぶつかって考えることなんだ。今はこれ以上の向上を望めない、だったらどうやって良いものを作り上げるか。たぶん、そうやって気づくんだと思う」

「あら、随分と買ってくれているのね 」

「才能あると思うよ。そして魅力的だとも思う。だからこそ不思議だった」

「ふふ……もったいなかったわね」

「これから活かせばいいよ。まずは、握手会に来てくれた十人のためにやってみよう」

 速水さんは俺が思うよりずっと大人で、同時に子供だったのかもしれない。


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