76: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/04(木) 02:38:22.45 ID:pTgjkfxw0
レッスン室の隅にトレーナーさんと並ぶ。
ウェアに着替えた速水さんはストレッチをしていた。
「急に呼ばれてびっくりしました。どうしたんですか?」
トレーナーさんは不思議そうに首をかしげた。
「すいません。どうやら少し掴んだようで、確認したみたいです」
「ああ、なるほど。最近よくなってきていたし、そろそろかなとは思っていたんですけど。ようやくですね」
「ええ、アイドル速水奏の門出です」
ストレッチを終えた速水さんは振り返り、妖艶に微笑んだ。驚くほど、魅力的な笑みだった。
「プロデューサーさん、見ていてね。魅了してあげる」
「もちろん。好きにやってくれ」
「ええ。トレーナーさん、曲お願いします」
「はい!」
曲がかかる。すると、速水さんは一度深呼吸。彼女が息を吐き出した瞬間、しんと空気が澄んだ気がした。
そこからは目を見張る展開だった。
歌はうねりを持って俺を引き込む。脳を直接撫でられたかと錯覚する痺れをもたらした。
ダンスは誘惑するように、そして私はここにいると主張するように、静かさのなかに荒々しさを持って進行していく。
以前と比べればミスが目立つ。しかし、抑圧した感情を解き放った速水さんは、そんなミスさえパフォーマンスだと思わせる力強さがあった。
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