37:名無しNIPPER[saga]
2016/07/30(土) 11:54:30.94 ID:yKoKZquYo
文庫本を抱えて目を丸くする鷺沢さんを横目に、ああだこうだと論を重ねる。
弁の立つ新田さんだが、俺の熱意に負けたのか、やがて観念したように俯いた。
「……居ません、けど」
「うん、そっか……ならいいんだ」
「……も、もう……何なんですか、Pさん」
「それで、いま好きな人とかは居る?」
突如として世界が暗転し、後頭部に衝撃が走る。
混乱した頭で顔を確かめようとして、ようやくクッションだった事に気付いた。
顔面に喰らった勢いのまま椅子ごとひっくり返ったらしい。
「…………っ……!」
逆さまになった視界の中で、赤いままの新田さんは涙まで浮かべていた。
鞄を引っ掴むと、踵を返して足早に事務所を出て行く。
この後レッスンあるんだけど大丈夫かな。
「……大丈夫、ですか……プロデューサーさん……?」
「……あ、うん、ありがとう」
鷺沢さんが手を差し伸べてくれる。
流石だ。哀れんだ目でこちらを遠巻きに見つめるあの薄情者たちとは一味違う。
81Res/44.10 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。