過去ログ - 京太郎「男子が混ざったっていいじゃないか」エピローグ
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7: ◆2nrFb/cgFg[saga]
2016/07/30(土) 10:13:14.73 ID:41ugXGpjo

「ほんとに、いいのか真屋さん」


 思わずそう問いかけていた。今の彼女は誰がどう見ても、一人ぼっちで嘆く少女。

 間違っても喜んでいるようになんて見えない。


「一人ぼっちだった私を見てくれたのは、先輩たちだけですから」


『意思なき者は喰われる、芸能界は魔窟だわ』


 ふいに絃さんの言葉が蘇った。真屋さんは絆に囚われ、決して望まぬ道を進もうとしている。

 俺は……何も言えない。言えなかった。一体俺が真屋由暉子の何を知っているというんだ?

 何も知らない男の言葉がどうして届くというのか。無意識に歯が軋んだ。


「――これで女子高生真屋由暉子は終わりですね。もう行かないと」


 焦燥に喉を焼かれた俺を余所に、電車は無情にも真屋さんを連れ去ろうと滑り込んできた。

 無機質に正確なダイヤ。それでもなお削り合う世界に向かう少女。


「応援、するよ。だから困ったことがあったら思い出してくれ。力になるから」


 電車の中に入った真屋さんはきょとんとした顔でこちらをまじまじと見つめてくる。

 子供に何ができるというのか、などと馬鹿にされるかもしれない。

 だが俺の本心に違いないのだ。泣いている女の子を見過ごせない、俺自身の我儘。


「            」


 数秒間固まっていた真屋さんは、透き通った笑顔を浮かべて唇を動かす。

 だがああ、扉は閉まってしまった。ガラスとアルミ合金の戸は音を遮るのに十分すぎる。

 俺の前から滑っていく彼女。知らずに数歩、縋るように足を動かし。

 ただ加速度的に離れていく距離を見ているしかできなかった――――



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