過去ログ - モバP「舞踏会の帰り道」
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3:名無しNIPPER[sage]
2016/08/10(水) 20:12:49.66 ID:/7spWSuao
かつてこの世界はアイドルという存在に熱狂していた。一つのブームという枠を越え、時代をも
揺り動かすような巨大な流れが存在していた。しかしそれはある日、とある事件をきっかけに唐突に
終わってしまった。白熱したアイドル競争の果てに生まれたその事件は世界をアイドルという夢から
覚ませてしまったのだ。どこにでもいたアイドル達の姿は今となってはほとんど見られない。各地に
あったアイドル事務所は次々と閉鎖し、業界でトップクラスの我がプロダクションでさえ、アイドル
部門は全盛期にに比べれば存在しないに等しいほど縮小した。多くのアイドル、そしてそれに
魅了された者達にかかっていた魔法は雲散霧消してしまったのだ。

「Pは……これからどうするの……?」
「うーん。当面は後処理業務に追われるだろうけどそれが終わったら……クビになるのかな……」
「プロデューサー……やめちゃうの……?」
「アイドルに対してプロデューサー業務してる奴が多すぎるからな。結構な数の元プロデューサーが
 路頭に迷うことになるんじゃないかな」

あのプロダクションは様々な分野に手を広げている。もしかしたら全くの別分野ではあるが雇用される
可能性はある。しかし今回の騒動で失職予定の人間の数は十人やそこらの話ではない。全員に新しい職が
斡旋されるのは難しいだろう。身の振りを考えなければいけない。

今回の決断に対して異を唱え、独立したプロデューサー達もいた。自分の担当していた人気のある、
しかし今回引退になったアイドル達を連れていったようだがあらゆるツテのある大手ですらこうなった
現状、成功はしないだろう。俺にはそんな博打を打てないし、アイドル達にも打たせたくなかった。

「Pは……心残りが……ある……?」
「そりゃあな。トップクラスのアイドルに出来てたら、まだアイドルも続けられていたわけだし」
「私はね……満足してるよ……。この四年間……とっても楽しかった……。Pと……みんなと……
 一緒にいれて……一緒にアイドルが出来て……楽しかった……。だから……満足してる……」
「そうか。ありがとな」

歩きながら雪美は静かに話す。昔と変わらない語り口。相変わらずキャリーバッグはガラガラとうるさい
のに不思議と雪美の声はよく聞こえた。


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