7:名無しNIPPER[sage]
2016/08/10(水) 20:14:33.51 ID:/7spWSuao
「雪美。元気でな。メールとかいつでもしていいからな」
「うん……毎日百回くらい……する……」
「いや、そこまでしなくていいから」
「冗談……ふふっ」
下らない言い合いをして引き伸ばせる時間はない。名残惜しく思いながら離れて行く彼女を見送る。
しかし少し離れたところで彼女は早足で戻ってきた。
「ゴミ……髪に……」
「ん? ああ、すまない。取ってくれ」
良く気付いたなと思いながら、彼女の目線と同じくらいまで屈む。彼女はキャリーバッグから手を離し、
両手で俺の頭を掴み、顔を近づけてくる。俺が何かを言うよりも早く、頬に柔らかい感触がした。そして
耳元まで静かに囁く。
「魂は……繋がってる……。あなたの思い……私には……わかる……。
私……待ってるから……寂しくなる前に……連れ戻してね……?」
そう言うと彼女は小さく手を振って、振り返らずそのまま駅の改札口の人ごみへと消えて行った。
雪美からも俺からも別れの言葉を告げることはなかった。呆然としながら彼女が口づけをした頬を撫でる。
かつて膝の上に乗りたがる少女だった佐城雪美もいつの間にか大人になっていたんだ。
そんなことを今更ながら実感した。
11Res/10.57 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。