過去ログ - 京太郎「鼓動する星 ヤタガラスのための狂詩曲」
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◆hSU3iHKACOC4
[sage saga]
2016/08/14(日) 03:37:18.20 ID:B82FWzEK0
「無理にやらせとるわけじゃなかろうな? 龍門渕の名が出るようになってから、あいつはなかなか笑わんようになった。
あいつはよく笑う少年じゃったはず……もしもそうなら」
染谷まこの質問に天江衣は答えられなかった。数か月間にわたって不可解な状況を耐えきった染谷まこの精神力は天江衣を委縮させる威力があった。
ただの小娘と笑えなかった。かたまっている天江衣を差し置いてアンヘルが答えていた。
「マスターは自分で選んでこの道を選びました。笑わなくなったのは、別の問題を抱えているからです。
信頼のために答えさせていただきますね。
マスターはいま退魔士の修行で躓いています。今というよりもこの数か月ずっと躓いたままです。修業の一歩目で躓いたのです。
修行を初めて数か月、全く一歩も前に進んでいません。
マスターの先生は『葛葉流』と呼ばれる退魔術を使うのですが、それを全く身に着けられていないのです。
同じ時期に修業を始めた同輩たちは楽に身につけられたというのに……それを気にしているのでしょう。
技量が低いわけでも肉体に問題があるわけでもないのに……それがマスターから笑顔を奪っているのです」
主人である須賀京太郎の恥をアンヘルが正直に話した。すると染谷まこはこういった。
「……京太郎らしいのお」
染谷まこが視線を切ると天江衣が動き出した。天江衣の呼吸が少し乱れていた。半笑いだった。須賀京太郎が先輩といって慕う理由が理解できた。
そして染谷まこの覚悟を天江衣たちが静かに称賛した。良い退魔士もしくはサマナーになれるだろう。そうしていると染谷まこがもう一つ質問をした。
「しかしなんでわしには聞いておらんと見抜けた? 見張りでもつけておるんか?」
すると天江衣が答えた。
「バレバレだったぞ。京太郎の話を聞いていたらすぐにわかったよ。
『染谷先輩にまた体がでかくなったなって褒められたんっすよ』とか
『染谷先輩に学生服ぱつぱつだって笑われたんっすけど、これ以上大きいサイズありましたっけ?』とかな。
私たちの情報操作は自由自在だ。
灰色の髪の毛に意識が向きすぎだ。ためしに京太郎がどんな見た目か咲に聞いてみたらいい。『数か月前と同じ』と答えるだろうよ。
理解したか?」
染谷まこはうなずいた。口元が笑っていた。理解不能な状態におびえすぎてくだらないミスをした自分を笑っていた。
染谷まこが納得した後天江衣がゲームをしないかと提案をした、その話を書いていく。それは染谷まこがいったん納得した後のこと。
染谷まこが何とか平常心を取り戻すと、隣の座席に座っている天江衣が雰囲気を変えた。今まで真面目な空気を出していたのだが、それがなくなった。
完全に脱力し、だらけた猫のようだった。そしてジャージのポケットに手を突っ込んで、こんなことを言いだした。
「話は終了だな。それじゃあ、ババ抜きでもしよう。
いやぁ、一時はどうなることかと思ったが、染谷が納得してくれてよかった。
京太郎は染谷のことをとても優秀で優しい先輩だといって褒め称えていたからな。下手なことをしたら本気で怒られる。
何というか、見た目ゴリラの癖に真面目でこまる」
ジャージから取り出したのはトランプが入った箱である。この時天江衣はもう片方のポケットから袋に包まれたクッキーらしきものを取り出していた。
トランプの箱とクッキーをどうするのかと思って染谷まこが見詰めていた。
両手がふさがったからだ。そうすると天江衣の尾てい骨あたりから緑色の光を放つ蛸の触手のようなものが現れた。長さ二メートルほど、太さは二十センチ。
本数は五本である。遠目で見ると緑色の尻尾が生えているように見えるが、至近距離で見るとものすごく邪悪な光景だった。
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