過去ログ - 響「ウラジオストクのヴェールヌイ」第10話〜最終話
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◆hc5Hlyk12iWK
[saga]
2016/08/16(火) 21:32:04.59 ID:lhRjor56O
絞り出すような声で、司令官が叫ぶ。
その目は憎々しげに長官を睨み、額には青筋が浮かんでいた。
提督『艦長室の金庫に隠した! デスクの横の黒い金庫に……!』
長官『…………』
長官『……フン、やはりロシア語を……』
長官『愛着を持ちすぎるのも考え物だな。人形が汚れるのがそこまで嫌か』
提督『ッ――!』ギリッ
長官『……鍵は番号式か? 暗証番号は?』
提督『……1225……クリスマスだよ』
提督『だが、番号だけじゃ駄目だ。開錠には俺の指紋も要る』
提督『……けど、今は手汗が酷くてね。もう少し落ち着けば分からんが……』
顔を真っ青にして、声を震わせながら、それでも嘘を通そうとする司令官。
あのレコーダーは、金庫になんて入っていない。
今まさに、この私が、帽子の中に隠し持っているのだから。
響『…………』
綱渡りというのは、こんな気分なのかもしれない。
重苦しく、そして張り詰めた空気。鼓動がどんどん早くなっていく。
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