過去ログ - 男「ここにいたんだ」
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107:名無しNIPPER[saga]
2016/08/20(土) 09:26:49.02 ID:D33bbYIF0
 いつの間にか、二人とも黙り込んでいる。

 こんな時に、気の利いた、面白いことが言えれば良いのに、と思った。

 俺は、もともとあまり話せる奴でもないし。

 ねえちゃんといる時ですら、だいたい話を切り出すのはねえちゃんだ。

 ユウキは普通にこういうのは上手だし。
 イケメン君も、話そうと思えば話せる人だ。部活では後輩とよく話してるし。

 なんだかなぁ。

 劣等感。

 勝手に劣等感を抱かれている人達からしたら、迷惑かもしれないけど。

 なるべく、会話が続くように努力はするんだけど、なかなか上手くはいかない。

 今年の夏は、それを直そう。

 でも、去年の夏はほとんど人と会わなかったし、今年もそうなら、
 直すのは無理かもな。

 セミの鳴き声が、俺を笑っているようにも聞こえた。頭の中を覗かれているような。

 自意識過剰。

 口をつけたジュースは、もうぬるくなっていた。

「……どうかした?」

 イチが、ポニーテールを揺らして、顔を覗き込んでくる。

「なんでもない」

 ……なんでもない。

 遠くから聞こえてきた子供の笑い声が、どこかふわふわとしていて、夢の中を歩いているような錯覚を抱いた。



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