過去ログ - 男「ここにいたんだ」
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302:名無しNIPPER[saga]
2016/08/28(日) 23:36:39.65 ID:ilA7zgD60
 公園には、誰もいなかった。

 夕方。赤トンボ。遠くで聞こえるセミの声。

 二人きり。

「ジュースでも飲むか」

 自販機でジュースを買って、いつものベンチに並んで座る。
 イチは相変わらず、いつもと同じものを飲んでいた。

 遊具の方を見ると、錆びた鉄に夕陽が反射して、
 不思議な雰囲気を醸し出していた。

 なんとなく会話がなくなる。
 なんか話さないと。……なんで? 別に黙っていても気まずい仲ではない。

 でも何か話さないといけないことはある。

 それが何か、まあ、わかってはいた。

 イチがジュースを飲んで、喉が滑らかに動く。少し見とれる。

 目が合う。目線をずらす。

 蜻が目に入る。錆びた鉄。伸びる影。

 いつのまにか、頼りない夕陽は、山の向こうに沈もうとしていた。
 頭上の空は、藍色に染まろうと意気込んでいる。

「あー」

 イチが振り返る。



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