過去ログ - 男「ここにいたんだ」
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6:名無しNIPPER[saga]
2016/08/17(水) 20:31:30.51 ID:cSUEPfQ20

 窓から風が入る。部室は風通しが悪いので、イチはありがたそうに両手を広げて、少ない風を受け止めた。

「俺に風がこないんですけど」

「弱肉強食だよ」

 そう言われると、なんだか反抗する気も失せる。サイズの合わない背もたれに体重を預けて、下敷きで顔を仰いだ。

 少しはマシになるが、それでも暑いことに変わりはない。湿気た空気が髪を撫でる。

 イチは、長いポニーテールを揺らす風が止むと、またさっきと同じように窓枠にもたれかかった。涼しそうな顔しやがって。

「ちーちゃんは何か言ってた?」

 窓際から離れると、トッ、トッっとつまづくように移動して、イチは定位置の(言いにくいな)椅子に座る。

 この部室は教室を横に切ったような変な間取りをしているので(だいぶ昔に改築した時に余った部屋らしい、おかげでタイムスリップしたような古くさい教室だ)、
 机は2列しか並んでない。
 横に5個ずつで、合計10個。

 部員は少ないので数は足りてる。

 俺は入り口から1番離れた2列目の席に座っていたが、彼女の定位置はその前の席だった。近い。

「いや……今日は会ってない」

 イチはふぅん、と返事をすると、いつもそうしているように、背もたれにお腹をつけて座る。
 向かい合わせになる。距離が近い。照れる。

 というか、こんなに暑いんだから離れて座ればいいのに。彼女はどんな時も、基本、この席に座る。

「そっかぁー……」

 イチはつまらなさそうに唇を尖らせた。



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