26:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:09:38.55 ID:Ljuzcmhc0
「歌ってすこしは気ぃ晴れた?」
「………!」
「こーんな台風の日にさ、そんなでっかいリュック背負ってバス停に一人で座ってりゃ、なにかあったのかも〜って思うに決まってるだろ」
わたしは何も答えなかった。
今日一日の自分の行動が子供じみていたことに、いつも子供っぽいとバカにしてた律先輩のほうがわたしなんかよりずっと大人だったことにむかっ腹が立って、リモコンを手に取りやたらめったらに曲を入れた。
やかましいイントロが流れ出し、眠りかけた律先輩が眉を八の字に曲げて顔を起こす。
「ここ、カラオケボックスですから。歌うところですから」
「へーへーわかってるよ。でも朝早くでるからな。適当なところで切り上げて寝とけよ。梓も明日は学校だろ」
モニターに歌詞が表示されて、歌い出そうとしたのに声がでない。マイクを持つ手がぶるぶると震えて、いつしかわたしは自分が泣いていることに気がついた。
ガンガンと室内に響く音楽の中、わたしは声をあげて泣いた。
気がついているのかいないのか、それとももう寝てしまったのか、律先輩は目を閉じたまま、じっと動かなかった。
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