過去ログ - モバP「誰かの夏と終わり」
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11:名無しNIPPER[saga]
2016/08/24(水) 23:04:41.07 ID:KLEjUIgh0
 見せたい景色があるんです。

 そう言って実家からPさんを連れ出し、最終バスに二人して乗り込みました。

 最初はぎゅうぎゅう詰めだった車内も、市街地を抜け、終点近くになると私たちしか乗客はいなくて。

 たった二人になっても、私とPさんは隣同士に座っていました。

「――え、この狭い道でバス同士すれ違うの?」

「はい! もっと狭いところもあるんですよ?」 

 この街は坂ばかりだから、山の斜面にも団地が広がりびっしり家々が立ち並んでいて、その間を縫うように道路が蛇行しています。

 普通車でさえすれ違うのがやっとの片側一車線を、慣れたバスの運転手は他所の人が見たらびっくりするぐらいのスピードで飛ばしていました。

 Pさんは不安半分興奮半分になって、バス同士がぎりぎりですれ違ったり、手を伸ばせば家々の軒先に触れるような外の様子に魅入っていました。

 その様子がなんだか可愛らしくて、私は思わず笑ってしまいました。

 バスが右に左に揺れるたび、私とPさんもふらふら流れて。

 ――最後の二区間、私は、誰も乗ってこないことを祈りながら、こっそりと、Pさんに体を預けていました。


 小銭での支払いに少しまごつきながらも、私たちは揃ってバスを降り、終点へ向かうそのテールライトを見送りました。

 昼に来た真っ暗闇の校舎を横目に、あちこちの茂みからの虫の声をやりすごしながら、蒸し暑い夜の坂道をそろそろと下ります。

 誘蛾灯を頼りに公園に入って、視界の開けた外苑に出て――二人で息を呑みました。

 眼下に広がるのは、私の故郷の夜景。

 星空を逆さに敷き詰めたような、光漂う長崎の街。

 やっと、溜息が聞こえました。

「――綺麗だな」

「世界の三大夜景、に認められたそうですよ」

 私は、自分のことを褒められたかのように誇らしい気持ちになって、知らずのうち、得意げな口調になっていました。

「夜景がきれいだとは聞いていたが……さすがだな、それにしても、ここって多分穴場だろ?」 

「はい。有名な展望台は別にあります。でもそこは、ガイドブックに載ってるような観光スポットだから人も多いですし……それに」

「それに?」

「日中、学校に挨拶に行った帰り、思い出したんです。学校帰りに見える夜景がきれいで、それでクラスのコたちが……」 

 そこで、この話がとても恥ずかしい告白に行き着くことに気がつき、私はじんわりとカラダが熱くなるのを感じました。

 思わずPさんのほうを見てしまうと――彼はもう、話の続きに期待している様子でした。
 
 もっと言うと、Pさんにはすでに話の内容がばれていて、それを私が赤面しながら白状するのが見たくて仕方ないといった顔でした。

 トクン、トクン、

 鼓動が速くなって、呼吸が浅くなって、

「下校の、で、デートで、使ってるっていうのを、思い出して……」


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