12:名無しNIPPER[saga]
2016/08/24(水) 23:06:46.16 ID:KLEjUIgh0
でも、記憶が連鎖した先で、蓋をしたはずの、別の記憶を掘り返してしまいました。
「だけど」
刹那、掻き消える体温。
「――だけど、この街にいた頃は、誰かと見たいだなんて思いませんでした」
夜光に向けている私の目が、きっと曇ります。
「私、ずっと芸能界にいたけれど……しばらく休養ということで、それでこの町に戻ってきていたから」
この里帰りの決行は、最後の最後まで、迷いました。
「愛想よくしながら、かつての私への関心が怖くて。怖がりながら、田舎だから仕方ないと、見下している自分がいて」
嫌でも思い出してしまうから。
「デートのこともそう。話を耳にして、皆くだらないことをしてるなって、思いながら――実際は、羨ましがっている自分を騙しながら」
熱帯夜の只中で、薄ら寒さを覚えます。
本当に、嫌になります。
だって、
こうなればあなたは心配してくれるから
浅ましい娘だと、自覚してしまうから。
そして、どうせひどい娘だと、開き直ってしまうから。
「……泰葉」
――剥き出しの肩に手が置かれるのを、感じました。
カラダは、それだけで血の気が通い、熱を取り戻し、湿気を帯び、火照りを湛え始めました。
余りにも自然に、あなたの懐に潜り込みます。
鼻腔からあなたを感じ、骨の髄が打ち震えました。
私はおとがいを上げ、プラネタリウムの時と同じように、あなたの瞳を覗き込みます。
その中には、星と、光とが散りばめられていました。
あなたを通してしか光を見出せなくなった私は――その深奥に、私自身を見ました。
岡崎泰葉は、笑っていました。
幾多の輝きに絡め取られ、永久に閉じ込められた私は、とても幸せそうな顔をしていました。
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