4:名無しNIPPER[saga]
2016/08/21(日) 23:19:20.13 ID:IIJt6e4C0
  
  
 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 
  
  
  ライブを無事成功させた私たちは、現地で一泊してから帰ることになっていました。 
  
  スタッフさんやスポンサーさんへの挨拶もそこそこに、明日も早いからと私とPさんは早々に席を抜け出し、 
  
 「お疲れ様でしたーっ!」 
  
 「お疲れ、悠貴」 
  
  ふたりで成功をお祝いしていました。 
  
  この一週間、すごーく大変なスケジュールをこなしてきたから、せめてこれくらいはとPさんが気を遣ってくれたんです。 
  
  私たちは会場を出た後、こっそりホテルの近くのコンビニで買出ししました。 
  
  Pさんは、おいしそうなものを手当たり次第にカゴに入れていました。 
  
  そしてホテルの部屋に戻った途端、ビニール袋の中身をばら撒いて、小さな丸テーブルはあっという間に埋め尽くされていました。 
  
  まずは、ひとつ500円もするパフェをそれぞれ取って、プラスチックのながーいスプーンでつつきます。  
  
 「それにしてもさっきはびっくりしたぞ? ライブが終わったと思ったらランニングに行ってるんだから」 
  
  子どもみたいな顔でチョコパフェをほおばりながら、Pさんが言います。その隣で、私もちっちゃなブドウと生クリームを口に運びました。 
  
  今日はカロリー計算はお休みですっ。 
  
 「えへへ、ごめんなさいっ。あのタイミングでしか、時間取れなさそうだったからっ」 
  
  毎日走らないと、なんだか落ち着かないんです。今朝だって、私なりの調整のつもりで軽めに走ったんだけど、ライブ後も、カラダがうずうずして、つい。 
  
 「部活のみんなが頑張ってるから、負けられないなってっ」 
  
  それを聞いたPさんは、少し悲しそうな顔でした。 
  
 「間が悪かったな。合宿だったっけ? 陸上部の」 
  
  私は、自分のうかつさに気がついて、 
  
 「あ、や、その、違うんですっ。確かに部活の合宿にいけなかったのは残念だったけど、でもでもっ、合宿自体は事務所のみんなとするし、それに……」 
  
  続けようとした言葉の、余りの恥ずかしさに気がついて、私の言葉とスプーンがとまってしまいます。 
  
  でも、それに、と言ってしまったから。恥ずかしかったけれど、私は、言いました。 
  
 「けーひさくげん? ってわけで……Pさんと一緒に、お泊り、できたから」  
  
 「……!」 
  
  言っちゃった。 
  
  いっちゃった、いっちゃったっ。 
  
  もう怖いものなんてないっ! 
  
 「そっち、行っても、良いですかっ」 
  
  隣に座ったPさんに言います。 
  
  私は――パフェを手に持ったまま――Pさんのひざの上に、向かい合わせになってまたがりました。 
  
 (こーやって、向かい合ってだっこしてもらうのが、一番好き……っ) 
  
  大人扱いでもなければ子ども扱いでもない。 
  
  コイビト扱いしてほしいんだって、気付いてるんです。 
  
  そんなキモチを目線にこめて、Pさんにまばたきしました。 
  
   
  Pさんのおくちは、チョコレートの味がしました。甘やかしなオトナの味。 
  
  ユウキはたぶん、ブドウの味。まだまだこれからのあまずっぱさ。 
   
  
21Res/29.81 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
板[3] 1-[1] l20 
	このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
	もう書き込みできません。