6: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/21(日) 23:44:38.71 ID:Aj1Xs5gP0
「なら、わたしがわたしに向けて意味のない文章を書くことは可能……」
「それもまた難しいと思います。ある瞬間においては可能ですが、恒常的に『意味のない文章』であることは、時間の経過を無視しなくてはなりません」
申し訳なさそうに無理を言うモリィ。不満のひとつでも表明しようかと思ったけれど、わたしが好きで老いているわけではないように、モリィもまた好きで不変なわけではないのだ。さすがに八つ当たりはかわいそうだろう。
「わかった。じゃあ、モリィにとって意味のない文章はどんな文章……」
「モリィには、モリィが泣く姿を描写した文章は『意味のない文章』です。他にも笑う描写も、怒る描写も、恋する描写も『意味のない文章』です。モリィには感情はないので、感情のないモリィの書いた感情に関する文章は、モリィにとって意味がありません」
困り顔のモリィが本当に困っているように見えて、わたしは噴き出しそうになった。感情のないはずのモリィに感情を見いだすのは、わたしがモリィの言葉に意味を見いだそうとしているからだ。なるほど、確かにわたしには意味のない文章の執筆は難しい。
と、そこでひとつの疑問が浮かぶ。
「わたしがモリィを書いたら意味はなくなる……」
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