16: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 21:36:29.58 ID:Bte9AddR0
「他の人は勿論、志希本人にも言わないでくださいね?」
そう言って彼は煙草の煙に乗せるようにして、話し始める。
「志希自身、誰にも見せないところで精神的に塞ぎこむ部分があったみたいで、それが仕事に影響したのかもしれないんです」
「スランプっていうほど大したことじゃないのかもしれない。ただの思春期にありがちな悩み事として片付けられるかもしれない」
「でも、志希にとってもその悩み事に思うことがあったようで、最近は少しずつですが、俺に心を開いてくれているような気がして」
「正直、俺は志希みたいに賢くはないし、あいつのすべてをわかってやれない」
「それでも、あいつひとりきりで抱えきれない感情を聞いて、その負担を和らげることができるなら、力になりたいんです」
ランプの灯りのような、じわりと温かい言葉。
いかにも彼らしい述懐を聞きながら、図らずもわたしは昔のことを思い出していた。
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