43: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 22:34:19.06 ID:Bte9AddR0
それから数年が経過した。
44: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 22:35:57.30 ID:Bte9AddR0
不況だと騒がれてはいるものの、嬉しいことに、わたしはまだ同じ場所で働くことができている。
どうやらわたしの事務員としての腕が買われたらしく、キャリアもそれなりに向上した。
皮肉にも、事務員としての才覚だけはあったらしい。
45: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 22:38:39.94 ID:Bte9AddR0
ジョギングは、いつの間にかやめてしまった。
それまででも、ただでさえ意義がなかったというのに、続ける理由がなくなった。
単純に、忙しくなったというのもある。
46: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 22:40:40.48 ID:Bte9AddR0
それでもアイドルの子達とは、仲良くしてもらっている。
暇な時間があればレッスンを覗きにいくこともあるし、付き合いの長いアイドルとご飯にいったりもする。
事務員という視点から、たくさんのアイドルがデビューする瞬間に立ち会ったし、引退する瞬間にも立ち会った。
47: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 22:43:59.05 ID:Bte9AddR0
使うことのなくなった備品をしまうために、三階の西方にある備品室に足を運ぶ。
時刻は午後九時を大きく上回っている。
48: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 22:46:31.70 ID:Bte9AddR0
以前見たときよりも散らかっていた備品室を抜けて、わたしは喫煙室の前に立つ。
見た目には変化のないその扉を開けると、換気扇の回る懐かしい音が、わたしを迎えてくれる。
「……あら」
49: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 22:49:56.90 ID:Bte9AddR0
ベンチに腰掛けて、そのまま何も話さないわたしを見て、落ち着かない様子で彼が話しかけてきた。
「あの、ちひろさん」
「はい」
50: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 22:52:39.72 ID:Bte9AddR0
「プロデューサーさんは、お元気でしたか?」
「そうですね。なんとかやってます」
一ノ瀬志希はいとも簡単にAランクアイドルになった。
51: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 22:54:54.80 ID:Bte9AddR0
「結構長いこと会ってませんでしたね、俺達」
「そうですね、社内ですれ違ったり、会議で一緒だったりはありましたけど」
52: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 22:57:02.38 ID:Bte9AddR0
「寂しく、ですか?」
「ああ、柄じゃないことを口にしましたね、ごめんなさい」
「いいえ! ……でも、たしかにちひろさんが寂しいだなんて、意外な感じがしますね」
53: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 22:58:18.44 ID:Bte9AddR0
「じゃあ、わたしはこの辺りで失礼します」
「あ、はい、お疲れさまです」
「はい。お疲れさまです」
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