過去ログ - アンパンマン「ばいきんまんはもういない」
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4:オータ ◆aTPuZgTcsQ[sage]
2016/08/23(火) 15:14:01.27 ID:Yu37ZZYbO
「アンパンマン!」


一階の工房までたどり着くと、バタコさんがこちらに走ってきて、ぼくに抱きついた。
戸惑うぼくの胸で、バタコさんは泣いている。
工房の奥のテーブルには、ジャムおじさんが腕を組んでいた。
ジャムおじさんの表情も、やはり辛そうだ。

なのにぼくは、二人の姿を見ても、そこまで動揺しなかった。


「アンパンマン、大丈夫かい?」

「はい、ぼくは大丈夫です」

「ダメよ!無理しちゃ!どうしてあなたはいつも……」

「バタコさん、ぼく、本当に大丈夫ですから」

「バタコ、離しておやり」


ジャムおじさんの悲しそうな声を聞いて、バタコさんは涙をこらえながら、ぼくから離れた。
シーンとした部屋に、バタコさんの苦しそうな呼吸の音だけが響く。


「アンパンマン、本当に行くのかい?」

「ええ」

「じゃあ、パトロール頼んだよ」

「はい」


ジャムおじさんは、いつもと同じ言葉をかけてくれて、ぼくはほっとした。
助けを呼ぶ人がいる限り、ぼくは行かなくてはいけない。
それがぼくの生きる理由だから。


「いってきます」


ぼくは外へとつながる扉へ、振り返らずに歩いた。
そして、ゆっくりとドアノブを回して、外に出る。
差し込んだ夏のお日さまは暑く、強い日差しに耐えられなくて、目が少しだけ痛くなった。
青々としげる草も、花壇に植えられたひまわりも、なに一つ変わってない。
変わってしまったのは、ぼくだけなのだろうか。


「困っている人を助けに行こう」


自分で確認するように呟いて、ぼくは空へと舞い上がった。
大きくもくもくとした雲は、真っ白に輝いている。
とても大きく聞こえるセミの声を聞きながら、ぼくは飛んだ。
セミの声に紛れて、助けを呼ぶ声を聞き逃さないよう、慎重に飛んだ。


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