過去ログ - アンパンマン「ばいきんまんはもういない」
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5:オータ ◆aTPuZgTcsQ[sage]
2016/08/23(火) 15:14:57.79 ID:Yu37ZZYbO
空が真っ赤に染まるころ、ぼくはパン工場を目指して飛んでいた。
今日は不思議なことに、困っている人は一人もいなかった。
行く手の森は、夕日に照らされて濃く影を伸ばし、一足先に夜が訪れている。
そんな森の上を飛んでいるとき、ふと動くものが見えた気がした。

少しだけ胸騒ぎがして、ぼくはなにかが見えた方へ着地する。


「誰かいるんですかー?」


ぼくが声をかけると、森のしげみが揺れて、くまの男の子が現れた。
その顔は疲れきっていたけど、彼はぼくの顔を見て安心したのか、泣き出してしまった。


「アンパンマン……!」

「もう大丈夫だよ。迷子になっちゃったの?」

「うん……だから、ずっとアンパンマンのこと呼んでたんだよ!」

「えっ?」

「来てくれて良かった……!」


彼は大きな声で泣き出してしまった。
そんな男の子をなだめているぼくと、動揺しているぼくが二つにわかれてしまったような気がした。
ぼくはきっと彼に向かって笑っているのだろう。
でも、ぼくの頭の中は真っ白だった。
なぜ、助けを呼ぶ声が聞こえなかったのだろう?
今日も、本当はたくさんいたんじゃないだろうか。
みんながぼくを呼んでいるのに、ぼくは気がつかなかったんじゃないだろうか。


「アンパンマン、おなか空いたよ」

「じゃあ、これを食べて?」


上の空のぼくは、気がつくと頭をちぎって渡していた。
くまの男の子は嬉しそうに、あんパンを食べている。
でも、その姿はとても遠く感じた。
セミの声だけが、大きく頭の中を響き渡っていた。


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