過去ログ - 文香「夢から覚めぬ夢」
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5: ◆TDuorh6/aM[saga]
2016/08/23(火) 23:28:15.01 ID:zjxhfud6O








『アイドル、どうですか?』


雨に包まれた夢の中で、私は一人の男性に声を掛けられた。
見慣れた本棚のアーチの下で、運命的な出逢い。
シンデレラにガラスの靴を差し出す王子様の様に、彼は私へと名刺を差し出している。


『あの…私は、あまり…そう言ったことは…』


数回の受け応えの後、ようやく自分がスカウトされた事に気付きサクッと断る。
当たり前だ。
いきなりアイドルになってみないか?だなんて。
おそらく私でなくとも断るに決まっている、筈。


素気無くされた彼は、肩を落として店から出て行った。
私は直ぐまた本のページを捲る作業に戻る。
人に囲まれるよりも本に囲まれていたい。
私は、そういう人だから。


けれど、何故か。
なかなか文字の世界にのめり込めなかった。


心の何処かで、願っていたのかもしれない。
私を本だけの世界から連れ去ってくれる王子様を。
私の手を取り、様々な世界を見せてくれる人を。
速読と本の知識しか取り柄の無い私から、魅力を引き出してくれる人を。


…待って、下さい!


そう言おうとしても、既に男性の姿は無い。
チャンスを自ら突き飛ばしてしまった。
そんな後悔が、私の胸を埋める。


立ち上がって、彼を追いかけようと。
その時、私の視界はグニャリと歪んだ










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