過去ログ - 提督「傑作だなぁオイ。笑えるぜ」
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51: ◆cDyTypz3/.[saga]
2016/09/10(土) 20:10:29.81 ID:u8X6z1g50
〇九〇〇。
彗星一二型三機が飛鷹から飛び立った。
扶桑「今のところ周辺に潜望鏡、水上艦の反応はありません。安心して発艦作業を続けてください」
隼鷹「はいよ」
その三機が横隊を作り、無事に偵察に向かったことを確認する。
搭乗員Σ「次に話すのは敵を発見したとき、か」
搭乗員α「それにしても、私らがいかないでいいのかねぇ?私らみたいなえりーとが」
搭乗員β「たまには若者を信じるというのも、いいんじゃないかね?」
相も変わらず軽空母組はのんびりとした会話を交わしつつ、三機は飛んでいった。
水平線の向こうへ消えかかり始めたところで、残りの彗星天山全機が発艦し始める。
その光景を飛鷹はただ黙って見つめる。
飛鷹「・・・駄目だわ、私がこんな気持ちじゃ」
一体何機が帰ってきてくれるだろう。
怖くて損害数なんて想像したくもない。
もしかしたら全員帰ってこないなんてこともあるかもしれない。
不安な気持ちを胸中に抱き続けている内に、いつの間にか編隊は三隊に分かれ、それぞれがぞれぞれの航路を採って動き始めていた。
隼鷹「どうしたよ飛鷹。全員無事に」
飛んだじゃないか、と突然手を強く握ってきた飛鷹へ向けて軽口を叩こうとして、やめた。
やめたというより、やめさせられた。
飛鷹が浮かべる表情に。
この世の終わりを待ち構えるようでいて、全霊を込めて各機に武運を祈るような、筆舌に尽くしがたい感情が飛鷹の顔に現れていた。
隼鷹は、自分自身も彼らを飛び立たせることが不安であることを認識しつつも、飛鷹のそれが自分とは比べるべくもないことを思い知らされる。
飛鷹「・・・」
隼鷹は言葉を続けずに、ただ黙って手を握り返した。
隼鷹「(本当は今すぐ舞鶴に帰りたいんだよね、飛鷹)」
こんなことをせずにすむ舞鶴へ帰りたいと、飛鷹のその顔から伝わってくる。しかし、隼鷹は帰りたいなんてことは全く思いもしていなかった。
それは、隼鷹が決して冷酷であるからというわけではない。楽観が、そして信頼が過ぎているだけ。きっとどうにかなると心のどこかで思っているから悲観的にならずに済んでいて、帰りたいという願望が湧いてすら来ないのだ。
しかし飛鷹は違う。信頼もしているが、その上でやはり悲観的な傾向がある。今すぐに逃げたいという願望は、帰りを待たねば信頼を示せないという考えを元に飛鷹自身が常に抑えつけている。
そんな葛藤を持っている飛鷹を知っている隼鷹からすれば、今回の作戦を彼女自身が考えたということが何より信じられなかったのであるが。
隼鷹「(隼鷹型の一番艦として、支えてあげなきゃいけないってことだね)」
既に空は白んだ。
太陽光を浴びながら、編隊は水平線の向こうへ消えていく。
特攻でもなければ無理矢理でもない。
歴とした作戦に秩序付けられた航空隊による、一世一代の殴り込みが行われようとしていた。
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