18: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2016/08/27(土) 00:18:04.11 ID:FC6wSZy00
扉が開いた時、そのアイドルはファッション雑誌を読みながらソファに腰掛けていた。
こちらを一瞥して、雑誌を置き、歩いてくる。
思わず顔を伏せてしまった。不審に思われているかもしれない。
「佐久間まゆです。よろしくお願いしますねぇ」
こちらの緊張を汲み取ったのだろうか? 優しい声で名前が告げられた。
穏やかそうな人で良かった。などと思っていたが、全身に相手の視線を感じる。
いや、常識的に考えて、これから共に活動する仲間がどのような人間なのか、興味をもつことはなんらおかしくはない。
むしろ、相手を見ずにずっと俯いている自分の方が異常なのだ。
……などと思考を巡らせていたら、少し、空白の時間が生まれてしまった。
(あっ……あいさつ……)
相手が自己紹介をしたのだから、次は自分の番。これも常識だ。
「……あ、あの……えっと……その」
うまく言葉が出てこない。初対面の相手との会話ではいつもそうだ。
きっと困らせてしまっている。名前を言うだけだ。名前を言わなくては。名前を。
「あの……も、森久保……乃々です……」
絞り出すような声になってしまった。別に運動をしてきたというわけでもないのに。
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