過去ログ - 【アイマス】事務所内外騒動記録録 -SS速報VIP

過去ログ - 【アイマス】事務所内外騒動記録録

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1: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:22:58.94 ID:oO5GQChB0

１．「犬も歩けばディナーに当たる」

「どう、響？　そっちの様子は」

「ダメだぞ伊織。全然、見当たんないっ！」

「……あぁ、もう！　人がこんなに汗だくになってまで探してるって言うのに、
　あの子たちは一体どこへ行ったのよ！」

　はぁはぁと乱した息、白く。

　普段ならば「うぅ、寒い」なんて思わず一人ごちる風の強さも、
　熱を持った今の体じゃ、まったくと言っていいほど気にならなくて。

　数分ぶりに響と顔を合わせた伊織は、
　その細い腰に両手を当てて、息を整えるために深呼吸を一つ。

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2: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:25:42.27 ID:oO5GQChB0

「大体ね、アンタだっていけないのよ？　しっかり手綱、握ってないから」

　額に浮かんだ汗を拭きつつ伊織がそう言うと、響が不満そうな顔で反論をする。

3: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:27:27.20 ID:oO5GQChB0

　ベンチの背もたれに疲れた体を投げ出すようにして、伊織が響を見上げて言った。

　だが、響はその場で足踏みを続けたまま、不安そうな顔で答える。

4: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:29:18.00 ID:oO5GQChB0

　伊織の問いかけに、響が自慢気にその胸を張った。

「自分といぬ美の付き合いだって長いからな！　
　こうして離れ離れになってても、いぬ美の行きそうな場所ぐらい……」

5: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:31:32.36 ID:oO5GQChB0

===

　水瀬伊織と我那覇響。二人が今いる公園は、その広さと充実した設備によって、
　街のちょっとした観光スポットにもなっているような場所だった。

6: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:33:58.09 ID:oO5GQChB0

「公園に着くなり、勢いよく走り出すなんて。いつもなら、そんなことしないのに」

「あら、それを言うならうちの子だってそうよ」

7: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:36:37.04 ID:oO5GQChB0

「何よこれ！　あの自販機、ちょっと冷やし過ぎじゃない？」

「そりゃ、寒くなって来てるのに冷たい飲み物なんて飲んだらそうなるさー。
　しかも今、汗だってかいてるし」

8: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:38:27.02 ID:oO5GQChB0

「運動した直後に、冷たい飲み物は避けるべし。それにね、レモンは疲れた体に良いんだぞ」

　だが伊織は、得意げに説明する響を鼻で笑うと、

9: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:40:43.04 ID:oO5GQChB0

　気づけば、もう陽も落ちようとしていて。

　夜の訪れを告げる音楽が、公園に設置されたスピーカーから流れだす。

10: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:42:06.38 ID:oO5GQChB0

「ううん、別に。ただ、何となく……ね」

　そうしてベンチから立ち上がると、

11: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:44:48.17 ID:oO5GQChB0

　二人が、再び並んで歩き出す。
　海側から吹く風に、汗ばんだ体が冷やされて。

　響の持つ、ホットレモネードの缶を見ながら伊織が言う。

12: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:47:39.91 ID:oO5GQChB0

===

「あの、ちょっと待って下さい。プロデューサー」

13: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:49:51.35 ID:oO5GQChB0

「どうした千早。薄着のせいで寒いって言うなら、上着ぐらいなら貸せるけど」

　そう言って自分の背広を脱ごうとするプロデューサーを、慌てた様子で千早が止めた。

14: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:52:18.06 ID:oO5GQChB0

「実は今日一日、時々ですけど、遠くの方から誰かに見られているような感じがずっと。
　まるで……そう、まるで誰かに、監視されているような。そんな視線が」

　困り顔のまま話を続ける千早に、プロデューサーが言う。

15: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:55:08.31 ID:oO5GQChB0

　そう言っておどけたように首をすくめたプロデューサーを、
　千早がムッとした表情で睨みつける。

　その、迫力たるや……。

16: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:56:14.35 ID:oO5GQChB0

　そんなことを言いながら、また数歩、千早が足を踏み出した時だ。

　それまで感じていたものとは違う、強烈な視線と気配を感じて千早が後ろを振り向いたのと、
　そこにいるはずのプロデューサーの姿が視界から消え去るのは殆ど同時の出来事だった。

17: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:57:14.71 ID:oO5GQChB0

＝＝＝

　よく、物語などで語られる「悲鳴を聞いた瞬間には飛び出していた」というシチュエーション。

18: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 11:59:01.09 ID:oO5GQChB0

「……何、今の？」

「悲鳴……かなぁ？」

19: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 12:01:08.49 ID:oO5GQChB0

「響、アンタ携帯ぐらい持ってるわよね!?」

「も、もちろんさー！」

20: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 12:02:55.19 ID:oO5GQChB0

　伊織の脳裏に、最悪の事態のイメージが浮かぶ。

　暗くなり始めた公園。男女の悲鳴。
　それに自分たちが向かっている先はこの季節、最も人が寄り付かないような場所。

21: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/08/27(土) 12:04:46.30 ID:oO5GQChB0

　ごくりと、唾を飲みこんで。
　そっと二人が、並んだ木々の間から顔を覗かせる。

　するとそう遠くない砂の上。地面に転がる誰かの姿と、その上で暴れる二つの毛玉。

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