過去ログ - 鷺沢文香「読み終えたら、またここに来てください」
1- 20
32: ◆.qG5SOGbi.
2016/09/10(土) 16:11:34.00 ID:1vo+ZrGq0
結局、学校へ向かう電車からは降りてしまった。
事情を知る友人には格好の弄りのネタを与えたことになるが、
どうせこのまま行ったところでそれは変わらないだろう。

さて、これからどうするか。家に帰るわけにもいかない。
特に当ても考えもないまま、駅を離れふらふらと街中へと進んだ。
そして、あの古書堂が駅から10分ほど歩いたところにあるのを思い出したのは、
目線の先にそれが見えたときであった。

鷺沢文香がデビューしてから、僕は古書堂に行かなくなっていた。
この店が嫌いになったわけではない。
彼女が古書堂からいなくなったあの日から、勧めてもらった本の頁がめくれなくなったのだ。
本を読むのは変わらず好きなままだったが、その本だけは読みかけにも関わらず手に取る気も起きない。
何となくバツが悪くてここに立ち寄ることさえできず、
気が付けば、アイドルにスカウトされた女性がトップアイドルとなって結婚するくらいには月日が経っていた。

よりにもよって、何故今日ここにたどり着いてしまったのか。
これなら学校に行った方が良かったかもしれないと自分の判断を悔やんでいると、突然店の扉が開いた。
外に出た店長さんの目線が、僕をがっちりと捕えていた。
忘れていてくれ。その思いも虚しく、店長さんが僕を見る目には、明らかに懐かしみと驚きが混じっていた。

僕は生涯でこの日一番神を呪った。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
59Res/32.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice