過去ログ - 鷺沢文香「読み終えたら、またここに来てください」
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50: ◆.qG5SOGbi.
2016/09/20(火) 02:01:27.69 ID:v95LF+Hh0
外に出ると、すっかり日は落ち、深い藍色に星々が輝いていた。
おそらく、この場所に来なかったらこれでさえ憂鬱だっただろうと思いながら、イヤホンを耳に挿し音楽を探す。

何もかもが腑に落ちていた。
あの頃の僕が、どうして鷺沢さんと無理やりでも話したがったのか。
どうして、鷺沢さんと話していただけの男を、必要以上に警戒していたのか。
どうして、鷺沢さんがアイドルになるのを嫌がったのか。
どうして、彼女が添い遂げたニュースが、すぐに信じられないほどの衝撃を持っていたのか。

単純な話だった。
初めて逢った時から、僕は鷺沢さんのことが好きだったのだ。
それも、他者から見れば簡単に分かるほど、あからさまに。

もちろん、その想いはもう叶えられないし、あの頃でもきっと叶えられなかった。
でも、その事実がかえって、胸のモヤモヤを吹き飛ばそうとしていた。

電車の中で、図書館で借りていた本を読み、すぐに閉じた。
これじゃだめだ。今は、とにかく家に帰りたくて堪らなかい。

読みかけだったあの本を、今なら進められる気がした。





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