過去ログ - 鷺沢文香の叔父「いばら姫と、彼女にまつわる物語」
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3:名無しNIPPER
2016/08/28(日) 21:50:55.99 ID:BPVNJIZM0
文香「シンデレラは…不幸な境遇を脱して幸せになりました。しかし私は、この書店にいた頃から幸せでしたから。幸せのカタチが変わっただけです」

叔父「なるほどね。そう言ってもらえると僕も嬉しいよ」

文香「強いてお姫様に例えるなら…『いばら姫』と言ったところでしょうか…」

叔父「それもグリム童話だね。何故自分をいばら姫だと思うんだい?」

文香「いばら姫を覆う大量の茨は、彼女を守るものでした。しかし、身を守るその茨によって彼女自身も囚われていたのではないでしょうか」

叔父「ふむ」

文香「もちろん茨に囲われていても、怪我を覚悟すれば外には出れたかもしれません。ですが、臆病な姫は傷を恐れ籠の内側に閉じこもってしまったのです」

叔父「いばら姫は深い眠りに就いていたはずだが…あれにも意味はあると思うかな?」

文香「ええ。いばら姫は恐ろしい魔女のいる現実から逃げ出し、夢想の世界へ閉じこもってしまったのです。永久に目を開けなければ、怖いものなんて何も見えませんから…」

叔父「つまり…いばら姫が目を覚まさないのは魔女の呪い以上に姫自身の意志に依るものが大きいと?」

文香「はい。一度魔女に傷つけられただけで姫は恐怖に耐えきれず、自らを茨の中に閉じ込めてしまったのです。まるで、かつての誰かさんのように…」

叔父「となると、姫の眠りを覚ましてくれた王子様は、プロデューサーさんということになるね。目覚めのキスはどう解釈するかな?」

文香「それについては…もちろんプロデューサーさんは私にキスなどしませんでしたが、代わりに彼の口からは魔法のような言葉が溢れ出しました。それが、私の呪いを解いたのでしょう」

叔父「なるほどね…確かに言葉には言い知れぬ力がある…口というものは、解呪を司る器官なのかもしれないね」

文香「はい…自分をお姫様に例えるのは、少し気恥ずかしいですが」

叔父「いやいや、文香ちゃんらしい面白い解釈だよ。しかし…良かれと思って文香ちゃんに読書の素晴らしさを教えてきたつもりだったが、それが文香ちゃんを縛り付ける茨になっていたとは…何だか申し訳ないね」

文香「いえ、叔父さんには本当に感謝しています。いばら姫だって、見守ってくれる人がいなければのん気に百年も眠り続けられなかったでしょうから…叔父さんの存在あってこその、今の私です」

叔父「そうかい…ありがとう。文香ちゃんは昔から本当に良い子だ…それをたくさんの人にわかってもらえるというのは、僕としてもすごく嬉しいよ」

文香「もしも私が読書をしていなければ、今のようにアイドルとして取り立てていただけることもなかったでしょうから…永きに渡る眠りも、必要なことだったのではないかと」

叔父「そうかもしれないね…ところで、他のアイドルの子たちとは仲良くやっているかい?」


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