1:名無しNIPPER[saga]
2016/08/31(水) 23:42:37.58 ID:F8h3FaQh0
カーテンの隙間から漏れた光が直線となって薄暗い部屋に伸び、それは私の顔に当たって、目覚めを手伝う。
恨めしく薄目を開けて、傍に転がっているスマホに手を伸ばして時間を一瞥する。確認してため息。
今日は仕事があるから、あと数十分もすればプロデューサーから着信が来るだろう。
出ても出なくても(大抵出ないけど)そんなのは関係なく、
着信からしばらく経つと合鍵を使って無理やり仕事に連れて行かれることは分かりきっていた。
担当アイドルの自宅の合鍵を持つプロデューサーなんて、週刊誌に載ったらスクープ間違いなしだよ、まったく。
それでも事務所が許可したのも、私の性格とプロデューサーへの信頼があってのことなんだろうけど。
はぁ……働きたくない。
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2:名無しNIPPER[saga]
2016/08/31(水) 23:44:08.60 ID:F8h3FaQh0
起き上がる気にもなれずごろんと寝返りをうつと、さっきまで枕代わりにしていたうさぎと目が合った。
「カエダーマ大作戦……杏の代わりに仕事いってくれないかなぁ……」
3:名無しNIPPER[saga]
2016/08/31(水) 23:45:56.51 ID:F8h3FaQh0
『そう、僕はうさぎだよ。聞こえてるだろう、杏ちゃん?』
「……喋れるんだね」
『声は出せないから、正確には杏ちゃんの心に話しかけてるんだけどね』
4:名無しNIPPER[saga]
2016/08/31(水) 23:46:49.28 ID:F8h3FaQh0
「どうしたもなにも、これから仕事なんだよ。あーめんどくさいなぁ」
『行きたくないんだ?』
「そりゃそうだよ。サボれるならそうしたいよ」
5:名無しNIPPER[saga]
2016/08/31(水) 23:49:17.60 ID:F8h3FaQh0
倒れたままじゃどうかと思いベッドを背もたれに立たせることにして、私はその横に腰を下ろす。
「そんな楽な仕事なんて、羨ましい」
6:名無しNIPPER[saga]
2016/08/31(水) 23:51:15.74 ID:F8h3FaQh0
『じゃあ、次は髪留めだ』
「いや、髪ないじゃん」
『耳にでもつけてくれれば大丈夫だよ』
7:名無しNIPPER[saga]
2016/08/31(水) 23:53:02.34 ID:F8h3FaQh0
『じゃ、次は服だ』
「服? 上はTシャツ1枚し着てないんだけど」
『ぬいぐるみ前では脱げない?』
8:名無しNIPPER[saga]
2016/08/31(水) 23:53:55.51 ID:F8h3FaQh0
『よし、体が軽くなったところで、体をぶらぶらさせてみなよ』
「ぶらぶらって……こんな感じ?」
『そうだね。うん。もっと軽やかに。何にも考えずに頭を空っぽにするんだよ』
9:名無しNIPPER[saga]
2016/08/31(水) 23:55:57.32 ID:F8h3FaQh0
ふと気が付くと、鏡で見なれた自分の姿が隣に立っていた。
ライブ衣装に身を包み、髪留めに付いたクローバーがキラリと光を反射する。
ステージマイクを持つ反対の手には、可愛くデコレーションされたスマホが握られている。
10:名無しNIPPER[saga]
2016/09/01(木) 00:01:27.56 ID:20XQIHEC0
『駄目。すぐに元に戻して』
「何故? きみが望んだことだろう? もうステージに立って歌うことも、レッスンに通うことも、面倒なことは全て僕が代わりに引き受けるさ」
『それでも駄目。そればっかりは、あげられない』
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