過去ログ - 工藤忍と白雪姫のおまじない
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1: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 21:48:48.43 ID:sQoozybl0
「ねえ、忍。『白雪姫』のウワサ知ってる?」

昼休み、お弁当を食べていたらクラスの友達が話題を振ってきた。

「白雪姫って童話の?」

「ううん。今ちょっと話題になってるおまじないというか都市伝説なんだけど」

それなら知らなくても仕方ない。

私はアイドルをしていて特に最近はそれなりに売れてきたから、よく学校を休んだり早退する。

そのため女子高生全体の流行には詳しくても、こういった学校や地域レベルの流行には疎くなりがちだ。

でも女子高生の間で流行るおまじないといえば、予想するのは簡単。

「わかった。つまりその『白雪姫』にお願いすれば恋が叶うんでしょ」

「全然違う」

ばっさりと切られた。

「『白雪姫』はね……」

そこで彼女は声をひそめて。

「人を殺してくれるの」

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2: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 21:50:18.97 ID:sQoozybl0
まずリンゴに殺したい相手の名前を鏡文字で刻む。

そして夜にリンゴを鏡の前に文字が写るように置き、こう唱える。

「鏡よ鏡よ鏡さん。世界で一番憎いのはだあれ?」
以下略



3: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 21:52:38.38 ID:sQoozybl0
人を殺すおまじない。

学生の間で流行るにしては物騒にも程がある。

けどそんなことよりも気になるのは。
以下略



4: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 21:56:45.33 ID:sQoozybl0
「ちなみに報酬がリンゴなのは、毒リンゴへのトラウマから毒じゃないリンゴをくれる人には好意的になるからだって」

「そんなトラウマを持つ人にリンゴ渡すのは嫌がらせだと思う」

聞けば聞くほど『白雪姫』では無理がある内容に思えてくる。
以下略



5: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 21:59:11.95 ID:sQoozybl0

「呪いなんてあるとは思わないけどさ」

と友達は椅子にだらしなく座りながら私の顔を見た。

以下略



6: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 22:03:26.61 ID:sQoozybl0
私は工藤忍、アイドルだ。

田舎に住んでいた私はアイドルになりたかったけど、親も含めて誰も応援してくれなかったから一人上京してアイドルをしている。

今思えば結構無茶なことしているけど、結果的にアイドルになれたんだからよかったと思っている。
以下略



7: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 22:07:19.64 ID:sQoozybl0
そうそう、初めは反対していた家族も、今では私がアイドルを続けることを応援してくれている。

初めは味方がいなかった私が、今は事務所のみんな、学校の友達、ファン、そして家族に支えられながらアイドルをしているんだから驚きだ。

こんなに嬉しいことはないし、とても有り難いことだと思う。
以下略



8: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 22:13:52.97 ID:sQoozybl0
放課後はそのまま仕事場へ直行。

今日は雑誌の撮影だった。

そして仕事を終えて事務所へ。
以下略



9: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 22:15:23.25 ID:sQoozybl0
考えていても埒が明かないので、近づいて聞いてみることにした。

「どうしたの?」

後ろから声をかけると後輩ちゃんはびくうっと体を震わせる。
以下略



10: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 22:22:05.86 ID:sQoozybl0
とりあえず後輩ちゃんを連れて家に帰る。

事務所ではできない話か、それともプロデューサーさんには聞かれたくない話か。

どちらにせよ、泣いている状態で外にいさせるわけにもいかない。
以下略



11: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 22:22:53.27 ID:sQoozybl0
今日後輩ちゃんはプロデューサーと一緒にテレビ局へ収録に行ったらしい。

そしてとある大物芸能人の控室へ挨拶に行った時のこと。

プロデューサーに番組スタッフから声がかかり、ほんの少し席を外した時にホテルの場所と番号を教えられたのだという。
以下略



12: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 22:25:57.44 ID:sQoozybl0
「私、どうしよう……」

話し終えた途端、後輩ちゃんはまた肩を震わせて泣き出した。

どうしよう、と言っているがこの子はこのままだと今夜ホテルへ行くに違いない。
以下略



13: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 22:28:49.79 ID:sQoozybl0
その日の夜、私は事務所の更衣室で『白雪姫』のウワサについて考えていた。

後輩ちゃんはおまじないを実行するだろうか。

……しないだろう。
以下略



14: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 22:30:02.53 ID:sQoozybl0
まず『白雪姫』に渡す報酬はリンゴじゃない。

『白雪姫』への報酬はお金だ。

殺しの依頼をする際には仲介人に多額のお金を渡す必要がある。
以下略



15: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 22:32:47.06 ID:sQoozybl0
次に『白雪姫』は対象を呪い殺すのではない。

状況によって違う手段も取るが、『白雪姫』は狙撃銃による殺害がメインだ。

呪いが使えたらもちろん使っていただろうけど、残念ながら『白雪姫』はそこまで万能ではない。
以下略



16: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 22:33:36.27 ID:sQoozybl0
そして何より間違えているのは。

私を憎む人はきっと多い。


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17: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 22:34:33.30 ID:sQoozybl0
上京したばかりの頃、私の生活は過酷だった。

特に金銭面で。

そんな生活を続けている中で、プロデューサーさんがある提案をしてきた。
以下略



18: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 22:41:21.04 ID:sQoozybl0
次の日、私は仕事はないけど事務所に向かった。

プロデューサーさんに『白雪姫』への依頼料を聞くためだ。

いつもプロデューサーさん経由で依頼を受けていたから、依頼から実行まで自分だけで済ますのは今回が初めてで勝手がわからない。
以下略



19: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 22:48:18.11 ID:sQoozybl0
「今回の報酬だ。依頼人は俺ということにしておいた」

「あ、あれ?仕事したの知ってたの?」

「当たり前だ。『白雪姫』はいまや表でもウワサになるくらいの有名人なんだぞ。『白雪姫』が仕事をしたかどうかはすぐ伝わってくる」
以下略



20: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 22:50:04.57 ID:sQoozybl0
お金を払わなくていいというのなら、それに越したことはない。

大人しく帰ることにしてドアノブを掴んだ私に、背後からプロデューサーの声がした。

「忍。今までのことをすべて忘れて、まっとうなアイドルに戻る気はないか?」
以下略



21: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/09/04(日) 22:52:53.67 ID:sQoozybl0
家に帰ると、玄関前で後輩ちゃんが待っていた。

申し訳なさそうな、ほっとした、暗く、不思議そうな、様々な感情の入り混じった表情をしている。

彼女の身に起きたことを考えれば、複雑な気持ちにもなるだろう。
以下略



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