過去ログ - 佐久間まゆ「あなたを待ちわびて」
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2016/09/06(火) 23:03:19.14 ID:RE0Y+nXd0
 「まさか、こんな日が来るとは思いませんでした」 
  
 「……ほんとだな」 
  
 ふう、というため息とともにあなたは応える。 
19: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 23:05:50.00 ID:RE0Y+nXd0
 「まゆ、きみ……お母さんになにか言った?」 
  
 「いいえ……わたしもまさか、こんなことになるなんて……」 
  
 これは本心だった。 
20: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 23:15:28.86 ID:RE0Y+nXd0
 ……そのまましばらくの間、わたしはあなたの声を待った。 
 あなたは何度もわたしを伺っては、所在なさげに目を泳がせるばかり。 
 それでもあなたは、わたしを拒むことなどない。 
 むかしのあなたなら、きっとわたしを振りほどき、わたしが部屋に入ることさえ断ったはずだ。 
 もしかしたら、あのとき無理にでもホテルに帰っていたのかもしれない。 
21: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 23:16:07.82 ID:RE0Y+nXd0
  
 「……」 
  
 「……」 
  
22: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 23:26:35.94 ID:RE0Y+nXd0
 いま、あなたは何を感じているの? 
 いま、あなたは何を思っているの? 
 こんなに近くにいるのに。あなたの呼吸の音すらはっきりと聞こえる距離にいるのに、あなたは何も話さない。 
 ……ちょっと前までのわたしなら、きっとすぐにあなたを求めていたでしょう。 
 あなたとのシルシが、キズナが見えていなかったあの頃のわたしなら、きっと。 
23: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 23:27:04.93 ID:RE0Y+nXd0
  
 「……」 
  
 「……」 
  
24: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 23:38:49.67 ID:RE0Y+nXd0
 あなたは何も話さない。 
 ねえ、あなたに出会ったあの日のこと、覚えていますか?わたしは今でも覚えていますよ。 
 読モ時代、スタッフさんの厚意で広島に旅行したときのことでした。 
 景色に見とれていたわたしがあなたにぶつかったとき、あなたをひと目見たあの瞬間……! 
 それは、なんと名付ければよかったのでしょう。 
25: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 23:39:48.84 ID:RE0Y+nXd0
  
 「……」 
  
 「……」 
  
26: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 23:48:36.49 ID:RE0Y+nXd0
 わたしはあなたの声を待つ。 
 あなたがいて、わたしがいる、ふたりきりの六畳一間で。 
 それは、一瞬のようでいて、永遠にも等しいと思うような時間。 
 ただ、あなたを待ちわびるこのひとときに、いつまでも浸っていたい。 
  
27: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 23:50:10.46 ID:RE0Y+nXd0
  
 ずっとこのまま、ふたりきりでいられたらいいのに。 
  
  
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