過去ログ - 佐久間まゆ「あなたを待ちわびて」
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26: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 23:48:36.49 ID:RE0Y+nXd0
わたしはあなたの声を待つ。
あなたがいて、わたしがいる、ふたりきりの六畳一間で。
それは、一瞬のようでいて、永遠にも等しいと思うような時間。
ただ、あなたを待ちわびるこのひとときに、いつまでも浸っていたい。
27: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 23:50:10.46 ID:RE0Y+nXd0
ずっとこのまま、ふたりきりでいられたらいいのに。
28: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 23:52:40.67 ID:RE0Y+nXd0
ふと、わたしの心の中でそんな思いを……バラのとげのような心の痛みを感じる。
時間が止まってくれれば……。ずっと、ずっと……変わらないわたしとあなたでいられたら……。
別れの時なんて、永遠に訪れなくてすむのに。
そう、ぼんやりと思ったとき。
29: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 23:55:09.45 ID:RE0Y+nXd0
〜♪
……静寂を破ったのは、わずかに階下から聞こえる音楽だった。
わたしの知らない曲。
30: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 23:57:02.44 ID:RE0Y+nXd0
「……『きっと忘れない』」
あなたは不意に、そう呟く。
「そうか、……そうか。もう、そんな時間か」
31: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 23:59:01.74 ID:RE0Y+nXd0
あなたは壁にかかった時計を一瞥し、合点がいった様子でわたしのほうに向きなおる。
わたしはその様子をぼんやりと見ていた。
そして、あなたとわたしの視線が合う。
32: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/07(水) 00:00:00.20 ID:2DraFmi40
「……まゆ、お誕生日、おめでとう」
33: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/07(水) 00:00:52.28 ID:2DraFmi40
「……え?」
突然のひとことに、わたしは茫然とするしかなかった。
そして、ひと息ついてその言葉の意味を把握する。
34: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/07(水) 00:02:06.25 ID:2DraFmi40
「……リビングにCDコンポがあったね。たぶんあれでこの曲を?」
「え、ええ。たぶんお父さんです。よくあのコンポで音楽を聴いていましたから」
記憶を辿る。確かに、お父さんはよくわたしの知らない曲を好んで聞いていた。
35: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/07(水) 00:02:45.97 ID:2DraFmi40
――この曲は、バースデーソングなんだよ。
――自分の好きな人に送る、バースデーソング。
36: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/07(水) 00:03:11.99 ID:2DraFmi40
わたしはあなたの言葉のひとつひとつを心の中にかみしめる。
「……いつだって君を、忘れはしない。って、ほら、ね」
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