過去ログ - 佐久間まゆ「あなたを待ちわびて」
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4: ◆dCFehqwTmo[sage saga]
2016/09/06(火) 22:10:01.23 ID:RE0Y+nXd0
「……仙台で、お仕事?」
アイドルとして活動をはじめて、もうどれくらい経ったのだろう。
華々しくはないけれど、それでも、応援してくれる方たちに恵まれて、わたしは忙しい日々を送っていた。
そんな、ある日。
5: ◆dCFehqwTmo[sage saga]
2016/09/06(火) 22:13:16.45 ID:RE0Y+nXd0
「あっちには2泊ほどする予定でね。平日の撮影だから、学校とも話を通したよ」
「この日程……いつもの収録とかぶりません?」
ロケの日付は、ちょうどわたしの担当するラジオ番組の収録日だった。
6: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 22:17:33.01 ID:RE0Y+nXd0
「それにしても、ずいぶんと余裕のあるスケジュールなんですね。ロケ、一日で終わりません?」
わたしは予定表を指さす。
ロケ地は3か所。どれも仙台駅からそう離れていない距離で、準備や移動の時間を差し引いても二日三日かかるロケとは思えなかった。
7: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 22:21:02.11 ID:RE0Y+nXd0
「……あ、ああ、違う!違う!べつにそういう意味じゃ……!!」
あなたは何か察したのか、そう言いながら両手を振るう。
『そういう意味』?
8: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 22:23:16.42 ID:RE0Y+nXd0
あるお仕事を思い出す。
それは、ついこの間。初夏の頃のこと。
ある雑誌で企画されているブライダル特集の撮影で、わたしはウエディングドレスを着ることになって。
撮影の休憩中、あなたを、教会に呼び出したときのこと。
9: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 22:26:29.88 ID:RE0Y+nXd0
「……きみは」
あなたの言葉を遮るように、わたしは右手の手のひらをあなたに差し出し、頭を振る。
左手には紅いバラのブーケ。
開け放たれた扉から入り込む潮風が、わずかに散っていた花びらを巻き上げる。
10: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 22:27:05.16 ID:RE0Y+nXd0
――あなたはプロデューサーで、佐久間まゆはアイドルだから…わたしとあなたは決して結ばれないって…知ってるから…。
11: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 22:27:33.20 ID:RE0Y+nXd0
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12: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 22:35:20.18 ID:RE0Y+nXd0
仙台での撮影は、何事もなく終わった。そう、本当に一日で終わってしまった。
朝早くに新幹線で故郷に向かい、現場に着き、メイクをしてもらって、打ち合わせ。それから、撮影。
NGも何回か出たが、カメラの角度やカンペの読み間違い、つまり、撮影を中断するほどのものでもなく、
結局陽が暮れる前にはテレビ局を後にしてしまうほどだった。
13: ◆dCFehqwTmo[saga]
2016/09/06(火) 22:40:38.15 ID:RE0Y+nXd0
「……さて、じゃあ行こうか」
あなたはそう言って、テレビ局の門を出てすぐにタクシーを呼んでいた。
数分もせずに来た車に乗り込み、あなたは運転手に、わたしの家の住所を口にする。
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