過去ログ - モバP「白菊ほたると一輪の笑顔」
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5: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 12:48:04.63 ID:QSjMH8mi0
 カメラマンと軽く打ち合わせをして、さあいざ撮影を始めようとした段階になって問題は発生した。

 どうやら機材トラブルが起きたらしい。幸い、少し時間をかければ解決できるそうなので、大人しく待つことにしよう。

 スタジオの端にあるパイプ椅子に、俺とほたるちゃんは腰を下ろした。

 ほたるちゃんの表情は暗い。俺はなんだかなぁと心で呟いた。

「あの……ごめんなさい。私の不幸のせいで」

 ぽつりぽつりと溢れでた言葉は自罰的すぎる。こんな些細なことにさえ責任を負おうなんて、とても十三歳の思考ではない。

 俺はなんでもないように笑う。実際、なんでもないことなのだ。

「よくあることなんだよ。べつにほたるちゃんのせいじゃあない」

「でも、私はいつもこうなんです。カメラは止まるし照明は消えて、音響はハウリングを起こすんです」

「それはなかなかのスタッフ泣かせだな」

 おどける。ほたるちゃんの言う不幸は、この業界にいれば必ず起こる。もちろん対策はするし改善もするけれど、避けられない。

 ある種の命題だろう。

 完全性は人の手によって生み出せるのか。

 自分の不完全さを自覚して嘆息する。十三歳に恋する男が完全であるはずはなかった。


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