過去ログ - 【ガルパン】マタニティ・ウォー!
1- 20
980:KASA[saga]
2017/03/15(水) 20:45:35.83 ID:0y+Q7sXpO
---------------------------------------------------------------------------

■188日目

夜中。ふと目が覚める。時計を見る。午前2時30分。

となりの部屋から、すすり泣く声が聞こえる。
エリカさんが泣いてる。

腹を抱えてと起き上がり、自室をでる。
隣の部屋に入ると、エリカさんは、ベッドにうずくまって、泣いていた。セミの幼虫が丸くなって、ひっ、ひっ、と、引き付けを起こすみたいに。

「エリカさん……?」

つくばで──お姉ちゃんが流産をしてしまた直後も、エリカさんはこんな風に泣いていた。
あの時自分は──この人は本当は強い人、だから、弱っているときは、私が守ってあげなきゃ──ふとそんな衝動に、心から駆られて──。

「エリカさん。」

同じようにして、震える背中を抱きしめてあげ──られなかった。お腹が、あの頃よりも随分と大きくなってしまっている。

「……。」

だから代わりに、同じように寝そべって、うずくまっているエリカさんの顔に、己の顔を近づける。あたかも、丸まったダンゴムシの甲羅に無理やり爪の先をねじ込ませるみたいに。

「エリカさん」

ひ、ひ、ひ、の引きつけにときおり鼻水が混じる。
エリカさんが顔をもたげた──

「……!」

涙でぐしょぐしょ、鼻水でぐしょぐしょ、充血した目と顔面は、見る影もなく無様……。
瞬間、堪えられなくなる。

「──エリカさん!」

体中の細胞が破裂した。卵母細胞を除く全ての細胞が分解した。つくばで感じたあの快感を、体中のあらゆるDNAが覚えてる。この人がほしい、この人の染色体がほしい、この人と染色体を組み替えたい。全身が総毛だって、それとともに染色体の一本一本がほどけだし、そして何億何兆のミミズとなって、全身を這いまわる。細胞核を飛び出して、エリカさんの染色体をひたすらに求めて。どこ、どこ、どこ?
みほは襲い掛かる様に──エリカさんの顔を抱きしめた。互いの鼻が接触し──その接触面に気付いた全ての染色虫が、エリカさんの表皮へ向けて殺到する。

「みほ、ごめん、みほ……」

皆あったぞ、この口の奥に、エリカさんの巨大な染色体が覗いているぞ。食らいつきたい。キスがしたくなる。した。
そのまま、唇の表皮細胞を削りあいながら、舌でこすり取りあいながら、聞く。

「どうしたのエリカさん」

舐めとった鼻水唾液涙、すべて、味を確かめた。ねがわくば、その体液に含まれるエリカさんの染色体がアミノ酸に分解されぬままありのまま吸収されて私の中に届きますように。

「ごめん、無理だった……」

「うん」

「みほが頑張ってるんだから、私も負けるもんかって。でも、ダメだった。私やっぱり、……まだ、一人じゃ……無理みたい……」

「そっか……」

その降伏によって、みほは理解させられた。エリカさんのつくばの夜は、まだ続いている。
だから、死に抗うために行ったあの必死の生の快楽を、自分達はまだまだ分かち合える。今、まさにこの瞬間からもう一度。
みほは今、それが嬉しくてたまらなかった。





そうだった、思い出したよエリカさん、あの時つくばの病室で──苛酷な環境に適応して強くなるために、生き抜くために、その必要な進化はひっそりと行われたんだ。それこそが私とエリカさんの、一番の秘め事。
冷え切ったつくばのあの部屋の中、私達はベッドの中で必死にお互いの身体の熱を交換しあった──その共有された熱エネルギーのイタズラのせいで、私とエリカさんの心の染色体はもう二度と元の二人には復元できないほど徹底的に──組み替えを起こしてたんんだ──

 ──だから、ごめんなさいお母さん。お母さんから受け継いだ染色体──もう、バラバラになりなっちゃった──

---------------------------------------------------------------------------------------------------


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/878.70 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice