過去ログ - 澪「シンクロナイズドドリーミング」
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21:名無しNIPPER[sage saga]
2016/09/09(金) 16:23:18.40 ID:ROM1DOs8o
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まあ、理屈はわかるんだ。共に立つ舞台で格好いい完璧な演奏を見せれば唯の気を引けるかもしれないっていう、その理屈は。
実際、唯ほどではないけど私もベースを演奏しながら歌を歌うのは難しかったから、そこに協力してくれた彼女には感謝している。
でも、それだけじゃ足りない。演奏は皆と一緒にするものだ。皆で合わせて練習する時間が必要なんだ。
そう考え、私は学園祭当日も早めに部室へ向かった。とにかく皆と練習がしたかった。

・・・実際はそれら全て、ただの私の現実逃避だった。
彼女はこれ以上ないくらいに私を仕上げてくれていたし、ムギや律も、唯までも一度のミスもなく演奏出来るようになっていた。
何も足りないものなんてない。私達軽音部は完璧な仕上がりになっていた。
ただ一つ、私の覚悟を除いて、だけど。

結局、いくら彼女と楽器の反復練習をしても、いくら皆と音を合わせても、上がり症で臆病な私の内面だけは変わりようがなかったのだ。
嫌になる。つくづく嫌になる。


律「もうすぐ本番なのに、そんな調子でどうするんだよ・・・」

澪「・・・もうやだ・・・」


さっきから、心臓の動悸が止まらない。嫌な汗もかいているし、胃まで痛くなってきた。
私がこんな性格だってこと、律ならわかってるはずなのに・・・


澪「律ぅ〜・・・りづぅ〜・・・」

律「はーなーせーってば!」


律はああ見えて面倒見のいい性格として知られている。でもこの件に関してはほとんど助け舟を出してくれない。
確かに、他に方法なんてないのはわかってる。わかってるんだけど・・・


唯「ごめんね澪ちゃん、私のせいで」


わかってるんだけど、せめて背を押す一言くらい欲しい。
そんな甘えた考えを抱いていた私に、頭上から枯れた声が降ってきた。


唯「私がこんな声にならなかったら、澪ちゃんが歌うことなかったのに・・・」

澪「唯・・・」

唯「やっぱ私がボーカルするよ!」ハスキー

律「いやいやいやいや」

澪「ご、ごめん唯、そんなつもりじゃなかったから!」


そうだ、そんなつもりじゃない。ただ単に緊張して嫌になっただけで、律に甘えていただけで、唯に押し付けるつもりなんて毛頭ない。あるわけがない。
どんなに嫌になっても、舞台に立てないほどでも、唯にだけは押し付けない。責任を感じている唯の代わりを務めたいって思ったのは確かなんだから。
こんな私を気遣ってくれる優しい唯の代わりだからこそ、引き受けたんだから。
それを思い出し、立ち上がる。
まだ怖い。まだ緊張する。出来る気なんて全然しない。でも・・・それでも私は・・・



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