過去ログ - 澪「シンクロナイズドドリーミング」
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22:名無しNIPPER[sage saga]
2016/09/09(金) 16:23:51.71 ID:ROM1DOs8o


律「あ・・・そうだ、MC考えておかなきゃ」

唯「MCって何?」


律が急に何か言い出し、唯の質問に答えた後にMCの真似事を始めた。いつものように、明るくおバカなノリで。
真似事が一段楽した後、皆で声を上げて笑った。
もしかしたら律は、立ち上がった私をずっと見ていてくれたのではないだろうか。
そんな気がしたけれど、直接尋ねる事はせず、私達は舞台へと向かう。

幕が上がる。

ちゃんと演奏出来るのか、歌えるのか、それはわからない。
でも、ダメでもいい。私が恥をかくだけで済むのだから。唯に負担はかけないで済むのだから。
半分くらいはそう開き直っていた。勿論そうならないに越した事は無いけど、最悪でもそれで済むだろうと思っていた。

観客の無数の視線に射抜かれるまでは。
その視線に興味と、それ以上に期待が篭っている事に気づくまでは。

私は、それに応えなくてはいけない。
私はこの時になって初めて、自身が観客の寄せる期待に応える義務がある事に気づいた。
出来ない、では済まないのだ。私が恥をかくだけでは済まないのだ。観客は、私達に興味を抱き、自らの時間を割いて見に来てくれているのだから。

観客の中に、いるはずのない『彼女』の姿が見えた気がした。

そうだ、彼女もきっと私に期待を寄せている。私の成功報告を待っている。あれだけ特訓につき合わせておいて「出来ませんでした」なんて許されるはずがない・・・!
そうだ、失敗なんて許されないんだ。観客だけじゃない。唯も律もムギも、私と違って成功させるつもりでここに立っているんだから・・・!

ダメだ。
ダメじゃいけないんだけど、ダメだ。
緊張するとか怖いとか、そういう問題じゃない。これだけの人達の期待に応えられる自信なんて、今まで重ねてきた練習の時間を裏切らない自信なんて、私には――


唯「澪ちゃん!」


興味と期待からくる無数の拍手の音の中でも、その呼びかけは私の耳に真っ直ぐ届いた。
それはきっと、今の私が見たかったものが、そこにあったから。


唯「みんな、澪ちゃんが頑張って練習してたの、知ってるから!」


そう言って、唯は笑った。
その笑顔の向こうに、私は確かに未来を見たんだ。また見えたんだ、光り輝く未来が。
今までの練習通りに、いや、それ以上にこのライブは成功する。そんな未来が。


律「そうだよ、澪」


その未来は正しい。そう言っているようにも聞こえる、律の言葉。


紬「澪ちゃん」


その未来へ向かおう、と、そう言っている様にも聞こえるムギの言葉。
三人の言葉が、私の背を押してくれた。


唯「絶対大丈夫だよ、頑張ろう!」


うん、大丈夫だ。頑張れる。そんな気がしてきた。
背を押してもらった。また背を押してもらった。
また、だ。だから、今度こそはちゃんと伝えたい。


澪「・・・ありがとう、みんな。私、頑張るよ。頑張るから・・・見ててね」


頑張る私の横顔を見ててね、唯。



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