22:名無しNIPPER
2016/09/09(金) 21:21:11.62 ID:mHQTk8ix0
 小梅と朋を駅まで送り届けた俺は、その日ホテルに泊まることにした。 
 財布とキャッシュカードが無事だったのは不幸中の幸いと言うべきか。 
 何より命のあっての物種だ。 
 亡き母への感謝の気持ちを抱え、その日はゆっくりと眠ることができた。 
  
 翌日は部長の計らいで休日だったのだが、事が事なので会社に来るよう電話で命じられた。 
 そこでちひろさんに今後の事務的な手続きについて説明された。 
 部長にも頭を下げに行くと「そんなことはいいからしばらくは俺の家に泊まれ」という業務命令?を受けた。 
 替えのシャツなどもお古を譲ってくれるとのことで、俺は何度も何度も部長に頭を下げた。 
  
 そして数日後、小梅と朋が揃ったタイミングで改めてお礼を言った。 
 溜め池への投身は見間違いだったとは言え、二人が特別に心配してくれたことは事実だった。 
 その気持ちがとても嬉しかったのも、また事実。 
 何より二人は俺を気遣って助言してくれたり、おまもりを貸してくれたり、あまつさえ溜め池の場所まで探して俺に会いに来てくれたのだ。 
  
 自分を長らく支えてくれた母はもういないが、今の俺には身を案じてくれるアイドルがいる。 
 この一件で、その有り難さは一層身に染みた。 
  
 「小梅と朋にはちゃんとお礼したいしな…何か食いに行くか?焼肉とか」 
  
 「わ、私は…Pさんのお母さんのお墓参りがいいなぁ…」 
  
 「私もそれに賛成よ!Pのお母さん、なんかすごいスピリチュアルパワー持ってそうだし!」 
  
 「はは…ウチの母親はそんな大層なもんじゃねえよ。どこにでもいる、ただの子ども思いの母親だ」 
  
 朋の発言に苦笑いしながら、俺は実家や家族のお墓がある方角を眺めた。 
 母さん…これからはできるだけ頻繁に墓参りに行くよ。 
 時々は俺の自慢のアイドルも連れて、な。 
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