8:名無しNIPPER
2016/09/09(金) 20:30:16.59 ID:mHQTk8ix0
気づくと俺は溜め池のほとりに立っていた。
夢で見た景色?
違う。今は現実だ。
辺りは暗く、古びた電灯が薄く世界を照らしているだけ。
ここが現実の溜め池だと認識できているものの、妙に頭がぼんやりとしている。
何より、「ここから動いてはいけない」という意識が強く脳内を占めていた。
まるで親の言いつけを守る子どものように、押し黙って俺は立ち尽くしていた。
ああもう良いや。
ここから動けなくても。
こうやって俺はずっとここにいるのだ。
昔からずっと。
離れたくないんだ…
じっと溜め池を見続けていたい…
そんな思いに頭が支配されていく。
突如ガサガサ!と背後の茂みが鳴った。
その瞬間、我に返って俺は後ろを振り返る。
音の主は現れない。
野良猫か何かだろうか?
その音を聞くや否やこの場にいることが恐ろしくなって、俺は早足で駆け出した。
いつ俺はここに?
なぜ俺はここに?
湧き上がる疑念よりも速く、速く脚を前へ。
アパートに戻ってきた頃にはすっかり息が上がっていた。
心臓の鼓動がうるさいほどに鳴り響く。
一息ついたところで、「今夜は眠れそうにないな」と他人事のように思えてきた。
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