過去ログ - 男「舞踏会なんて滅べばいいのに……」
1- 20
1: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/11(日) 23:30:36.32 ID:WSdG3wG30
クリスマスと一緒だ。
参加が強制ではないからといって、その日を楽しめないものは世界からひどく阻害された気持ちになる。

うちの高校には、プロムという行事がある。
高校三年生が卒業前に、男女でペアを組んで舞踏会を行うというものである。
学校の公式行事であり、保護者も見守る中、荘厳な音楽のかかっている体育館の中で踊るのだ。

体育が苦手でただでさえ体育館が嫌いだったのに、ますます嫌いになりそうだった。

SSWiki : ss.vip2ch.com



2: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/11(日) 23:32:04.34 ID:WSdG3wG30
母「あんた、ダンスパーティいつやるか決まったんだっけ」
男「プロムのこと?卒業式前だよ」
母「それそれ。何日の予定なの?」
男「わかんない」
母「あんた、彼女とかいるんだっけ」
以下略



3: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/11(日) 23:38:31.48 ID:WSdG3wG30
妹「こいつに相手なんているわけないじゃん」
母「あら、おかえり。お兄ちゃんにこいつなんて言わないの」
妹「友達のお姉ちゃんが言ってたらしいんだけど、どんなに冴えないやつらでもぼっち避けるためにパートナーを必ずつくるんだって」
母「ぼっちって何?」
妹「一人ぼっちのこと。参加しないと相手のいない可哀想な人認定されちゃうから、恋人としては無理でもその日しのぎの為の相手を作るんだってさ」
以下略



4: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/11(日) 23:43:15.74 ID:WSdG3wG30
男「誘いは来たよ。ただ教師とかによく反抗する人でうざそうだったから断った」
母「えっ、なによそれ。どんな子なの?」
妹「どうせ嘘よ」

イライラがつのってきたので黙って二階の自室に戻る。
以下略



5: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/11(日) 23:52:35.01 ID:WSdG3wG30
昔はアニメが好きでよく見ていた。
小学生の男の子なら、何曜日の何時にどのアニメがはじまるかみんな覚えているだろう。
月曜日の7時から30分アニメが放送されて、来週の7時が待ち遠しくなって、7時半から始まるアニメが終わると来週の7時半が待ち遠しくなって。
そういうことを月曜日から日曜日まで繰り返していた。

以下略



6: ◆uw4OnhNu4k[saga]
2016/09/11(日) 23:58:44.29 ID:WSdG3wG30
典型的な、全くもてないタイプではなかったと思う。
異性と会話も時々したし、それなりに仲の良い女の子も中学時代にいた。
毎日メールをする異性もいた(内容はその子が好きな男の子についての悩み聞きだったが)。

しかし、特定の女の子と異性としての間柄にはなったことがない。
以下略



7: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/12(月) 00:02:57.14 ID:jqHnJYhW0
どうしてこんなに劣っているのだろう。
父親も、母親も普通なのに、どうして僕の遺伝子だけこんなに劣っているだろう。
妹はよくわからないが、あれだけ罵倒してくるからには自信を持てるような生活を送っているに違いない。

自分は生まれてから不器用なことばかりで、映画やドラマになるような青春は欠片も経験できなかった。
以下略



8: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/12(月) 00:07:06.51 ID:jqHnJYhW0
男「大してかっこよくもなく、性格もよくないくせに、それなりにかわいい彼女がいるやつってなんなんだろうな」
友「自分の下位互換みたいな存在なのにどうして自分より幸せなのかって不満か?」
男「まさにそう。あいつに彼女ができてるのに、なぜ俺にはできないんだって。あいつの彼女に告白したら、俺と付き合ってくれないかなって」
友「まだまだわかってないな男は。そいつには勇気があるんだろ。その点では圧勝してるんだよ。いうなら、男よりかっこわるくて、頭も悪くて、もしかしたら性格もよくないにもかかわらず、女の子に話しかけて告白する勇気があった」
男「勇気があればどうとでもなるものなのかな。俺も勇気があれば彼女ができるのかな」
以下略



9: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/12(月) 00:13:40.74 ID:jqHnJYhW0
友「話が少しだけ変わるんだけどさ」
男「うん」
友「異性が現れないものは、やっぱり何もかも青春とは言えないと思う?」
男「たとえば、部活とか、ボランティアとか、合唱際とか、体育祭ってこと?」
友「そんな感じ」
以下略



10: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/12(月) 00:23:04.71 ID:jqHnJYhW0
友は少しさみしそうな表情をしているように見えた。
そのことに気付いていながら、自分は自分の怒りを主張するほうを優先したかった。
男「今俺すごいひねくれてること言ってるけどさ。彼女がいた青春を送ってたら、こんなにすさんでなかったんだと思うんだよ」
男「毎晩何を考えていると思う?」
男「『あのときああしていたら』だよ。まだ10代後半に費やしたことは、10代前半で失敗したことをただ後悔することだけだった。まぁ、10代後半でもたくさん後悔してるけどな」
以下略



11: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/12(月) 00:24:39.80 ID:jqHnJYhW0
続きはまた明日。


12:名無しNIPPER[sage]
2016/09/12(月) 02:00:25.08 ID:trCsMtWg0
セリフごとに改行した方がみやすいぞ

何はともあれ乙


13: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/12(月) 22:12:28.69 ID:jqHnJYhW0
>>12
確かに見やすいですね。改行します


14: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/12(月) 22:31:31.38 ID:jqHnJYhW0
高校三年生は大学入試のシーズンが訪れると、ほとんど学校に来なくなる。

前期の日程で志望大学に受かるものもいれば、なかなかうまくいかずに後期の日程で少しでもランクの高いところに行こうとする者もいる。

僕はというと、最低ランクの滑り止めの大学だけに合格し、そのまま惰性で日々を送っていた。
以下略



15: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/12(月) 22:38:03.85 ID:jqHnJYhW0
安心したことが一つ。

意外にも、クラスメートの全員が、僕と似たり寄ったりのところに進学していた。

同じ学力で同じ高校に入って、同じような仲間に囲まれて、同じ先生から三年間勉強を教えて貰っていたら、同じような結果になるんだなと思った。
以下略



16: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/12(月) 22:48:21.72 ID:jqHnJYhW0
"ろくな英語教師が在籍していないアメリカかぶれの糞私立"

"やる意義を見失っている行事においては天下一舞踏会"

"チェリーは卒業できない日"
以下略



17: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/12(月) 22:56:12.05 ID:jqHnJYhW0
男「なあ、学校っていうのはさ、学校が大嫌いなやつが建てるべきじゃないか?そして、先生っていうのもやはり学校が嫌いだった人がなるべき職業じゃないか?」

男「学校の先生になるやつはさ、学校が好きだったやつらだろ。学校に良い思いでがいっぱいあったり、あこがれるような教師に恵まれてたりしてたやつらだろ」

男「そんなやつらがさ、俺らみたいなやつの気持ちなんてわかるわけないじゃん。なぁ、聞いてる?」
以下略



18: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/12(月) 23:01:40.57 ID:jqHnJYhW0
それから帰り道に至るまでも、僕は友にずっと学校やクラスメートやプロムの悪口を言っていた。

妬ましいとか羨ましいという言葉は使わなかった。くだらないとか、嘘っぽいとか、貶める言葉ばかりを使った。

友の表情が険しくなっていることには気付かなかった。
以下略



19: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/12(月) 23:05:16.17 ID:jqHnJYhW0
友と映画の約束はずっと前にしていた。

クリスマスの日にそうしたように、またプロムの日にも世界に二人で抵抗するつもりだった。

友は、僕に内緒で、女の子をプロムに誘った。
以下略



20: ◆uw4OnhNu4k[sage saga]
2016/09/12(月) 23:14:41.18 ID:jqHnJYhW0
おめでとう、とか、がんばったなとか。

そういう言葉をこの際(キワ)でかけることができる人間だったら。

僕の人生はもっとまともで、もっと愛されていたのかもしれない。
以下略



21: ◆uw4OnhNu4k[saga]
2016/09/12(月) 23:16:12.31 ID:jqHnJYhW0
ずるいぞ、と言いたかった。

同レベルの醜い言葉で返して欲しかった。

友はいつの間にか、今までの何かを振り切り、切り捨てて、新しい自分になる決意を固めていたんだろう。
以下略



60Res/32.31 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice