過去ログ - 星輝子「第3.5回 フレ志希のケミカルカオスキュートラジオ(仮)」
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6: ◆mBiXSAH/fw[sage saga]
2016/09/13(火) 23:56:21.05 ID:/wRsch+H0

TRACK4.THE VOICE OF GRIEVOUS CRY

始めての戦いは終わった。
キノコ王国優勢で片がついたらしい。周りで慌しく戦後処理をしている。
俺は何をするでもなく返り血で塗れた剣をぶら下げ、月を仰ぎ見ていた。

「初めてにしては上出来だ。良くやった」

俺をスカウトした上等兵だった。短く言う。

「約束は守れ」

「もちろんだとも。君の妻と息子は城下町で手厚く保護している。
今までとは比べ物にならない豊かさだ。きっとお前に感謝しているだろう」

詐欺師のような物言いだ。

「『逃がさないよう城下町で厳重に監禁している』の間違いじゃないのか」

俺は戦闘の猛りが収まっていないのか、言い返してしまう。
……自身のコントロールが効かない。

「だとしても君のやることは変わらないだろう」

悔しいがそのとおりだ。何も言い返せない。

「私は軍の中でもそれなりの地位でね。君には期待しているよ。さらばだ」

ともあれ妻と息子の安否が確認できてよかった。

……二人の顔を思い出す。
そして月明かりに照らされた赤黒い剣と血まみれの両手を見る。

望んだ世界と今居る現実とのギャップに疑問が脳内を駆け巡る。

どうして、この血塗られた手で二人に触れられるのだろう。
どうして、あの酔っ払いを突き刺したのだろう。
どうして、キノコ王国とタケノコ帝国は戦争しているのだろう。
どうして、この世界に奴隷制度があるのだろう。

どうしてどうしてどうして――――――!!
反省と後悔と失意と喪失感と虚無感と、あらゆる感情が幾重にも折り重なった胸の痛みを抑えきれず、
俺は屈み込んで叫んだ。

「うぁぁあああああああああああああああああ!!」

悲痛な叫びが血塗られたシイタケ平原に響き渡る。
目の前の赤黒く着色された菜の花にはミツバチも寄り付かない。

「獣かと思ったら人か。何をそんなに叫んでいるのじゃ?」

ミツバチは寄り付かないが、人間は寄り付くようだった。



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