2:名無しNIPPER[saga]
2016/09/14(水) 20:47:26.28 ID:BjprVN+x0
大きな声に顔を上げてみれば、曜が一瞬のうちにプールに飛び込むところだった。
大きな水しぶきが上がるかと思ったが、そうでもなかった。
それよりも、曜の動きに、水に飛び込むその身体に、無邪気に笑うその笑顔に、意識を奪われていた。
曜「ね、善子ちゃん!どうどう?似てた?」
善子「そ、そんなのわからないわよ。」
ぶっきらぼうに言った自分に、そっかと困ったように笑う。
本当はもう1回見たい。それくらい輝いて見えた。
でも、もう一度なんて頼んだら変だと思われはしないだろうか。
善子「こ、今度は技とか、見てみたい、かも。」
他の技ならいいだろうと、恐る恐る頼んでみた。
曜「ほんと!?よーっし、この渡辺曜にお任せください!」
曜はおどけた調子で走り出す。
入念に身体を伸ばし、台にのぼる。真剣な顔つき。
タンッと乾いた音ともに空中に跳び上がった曜は、くるくると回転し、再び静かに水に消えた。
善子「す、すごい…。」
思わず呟いてしまう。自由に宙で回転する曜は、なんだか天使みたいだと思った。
曜「えっと、今のがこういう技でね、次にやるのが――」
ざぶざぶと泳いで戻って来て、自分の顔が晴れてきたのに気が付いたのだろう。
曜が勢いづいて説明してくれる。
しかし自分は、相変わらず最初の1回のことを考えていた。
飛び込みのことはよくわからないけれど、あの1回が一番好きだった。
何の技も含んでいない、ただ跳んだだけ。
それだけなのに、やたらと惹かれた。
曜はというと、自分にビデオカメラを託し、いつの間にかフォームの確認を行っていた。
こうなってくると、もはやただの自主練習である。
善子「まったく、曜さんは…。」
何となくふわふわした気持ちを抱えながら、カメラを構えた。
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