過去ログ - 新田美波「上書く口付け」
1- 20
6:名無しNIPPER[sage saga]
2016/09/17(土) 21:40:26.30 ID:CHRKUnfE0
「……ふふ」


 身体の真ん中。服で隠れて普段は外へ晒されないそこへ、うっすらと赤く濡れた自分の証が刻まれたのを目で見て確かめて。それから、仰向けの身体の横へと寝かせられた腕を手に取り、掴んで引き寄せて、その指先を口元へ。

 大きくて収まりきらないそれを、はみ出させてしまいながらもなんとか手のひらの中へ包み込んで。ぎゅっぎゅ、と何度か握ってみる。さわさわ、と何度か撫でてみる。つつー……、と何度かなぞってみる。愛しさを込めて、愛しながら、愛でる。


「みくちゃん……李衣菜ちゃん……」

「喧嘩して、顔を背けあって……それを、プロデューサーさんは仲直りさせて……二人の頭を、優しく撫でてあげて……」

「あの二人と……あの二人との触れ合いの中で、優しく、温かく、心を尽くして添えられた……プロデューサーさんの手……」


 口付け。足の先へしていたように口の中へと迎え入れ、けれどその時ほど深くはせず、唇で食みながらちろちろと舌先で舐めるようにして。口付け、私をそこへと刻んでいく。

 ゆっくりと、決して雑にはせず、一食み一舐めにはっきりと意識を持って想いを帯びさせながら何度も何度も。五本の指のそのどれもが私の涎に濡れ、注がれた想いに熱を孕み、しっかりと私で塗り上げられるよう尽くして捧いで。私を贈る。


(は、ぁ……)

(幸せ)

(本当の在るべき幸せとは、少し、ずれてしまった幸せだけど)

(でも、幸せ)

(何も隠さない私。本当の……いくつもある本当の私の内の一つ、欲望に従順なありのままの私)

(それでいられる。裸のままで、いられるこの時が)

(堪らなく、幸せ)


 欲望に従順なこの姿が私の本当であるように。普段の私も、他所行きの私も、仲の良い皆といる時の私も、恥ずかしくてこの今の私の姿を後からいつも後悔する私も、どの私も紛れない本当なのだけど。

 でも、この今の、こんな姿もどうしようもなく本当で。

 普段皆を纏めたり、代表して何かを任されたり、信頼から責任を送られたり、そんな私も。それを率先して行い、自分から手を挙げて立候補して、受け取った責任に奮起したり、ほんな私も。そのどれも、本当の、私ではあるのだけど。

 でもそんな、本当だけど縛られた、何かを背負って何かに縛られたそれらとは違う。この、ここの、こんな今の私は、この今の本当は、何も負わずに何にも縛られない。欲望の赴くまま、したいことを、こうして実際にしてしまうだけ。

 自由で、解放された、そんな本当の姿。

 だから今のこの時が、私にとっては、堪らなく幸せ。

 この好意を、このわがままを。

 この恋心を、この思いの丈を。

 この純粋な愛おしさを、この醜い嫉妬心を。

 何もかもを。プロデューサーさんへ――大好きな人へと抱く、贈る、想う何もかもをありのまますべて尽くすことの叶うこの時が。私には、堪らなく。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
16Res/28.80 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice