57: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/10/02(日) 11:55:29.12 ID:9fHQez770
皮肉たっぷりに私は唇を引き延ばした。
「ご、ごめんなさい……」
彼女は質問に答えずに謝った。
芯は弱い人だったから、びびったのだろうか。
目尻に涙を溜めている。
「同じ根暗なら、何もしないと思ったの?」
ゆうは黙ってしまった。
傷つけばいいの。
「あんたは、周りは変わらないって言ったよね? 自分が変らないとって。でも、それ、根本的には自分に責任がなかったか真剣に考えてないだけだから。最初にそれ考えなきゃいけないんじゃないの? あんた、お父さんが不倫相手刺すまで何も知らなかった? お母さんの様子は? 何か役立とうとした? 気づかなかった? 違うよね。気づこうとしなかったんだよね」
天子が南合と付き合って、一番傷ついた人間がいたとしたら、それは私。
早く別れればいいといつも願っていた。
デートの約束を入れられる前に、遊ぶ約束を取り付けた。
二人の話を真剣に聞いたことなどなかった。
天子からの南合の性格についての相談も、適当にアドバイスして。
忘れてない。
本当に、二人は好き合っていたこと。
それを応援しなかった自分を。
痛いくらい苦しかったこと。
目の奥からじわじわと熱が溢れてきた。
「江梨香さん……?」
泣くな、泣くな。
友だちでもなんでもない子の前で。
中途半端な関係の人の前で。
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